表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上に眠る蒼穹~Celeste blue~  作者: ZAKI
第1部 スラム編
31/202

第7章 ヒエラルキー(1)

 ――奥さん、気を落ち着けて聞いてください。


 ビジュアルホンの画面に映った夫の会社の上司が、沈鬱な面持ちでそう言うのを聞いたとき、新見ジェーンは言い知れぬ不安をおぼえた。鼓動が、いつになく速い。

 これからこの人が言おうとしていることを、聞いてはいけない。そう思うのに、躰は意思に反してモニターのまえに凝固したまま、一歩も動くことができなかった。


 あの人に……、夫の身に、なにかあったのだ。


 不吉な予感はしていた。とくに連絡が途絶えたこの数日、ずっと……。けれど、彼の身にいったいなにが、どんなことが起こったというのだろうか?


 最後に夫からのメッセージが届いたのは、もう4日もまえ。

 たった1行だけ。


『ごめんね、ジェニー。心配しないで』



 なぜ……。いったい、なにがあったというのだろう。

 でも、いまはこれ以上、聞きたくない。なにも――


 モニターの中のくたびれた中年男の口がゆっくりと開き、事態を告げる。


 やめて。やめて。なにも聞きたくない。あたしになにも報せないで。


 疲れきった、しゃがれた声が言った。


 ――あなたのご主人の宿泊しているホテルが、なんらかの原因で爆発炎上したとの報せが、たったいま入りました。まことに残念ですが、ご主人も、パートナーのカメラマンも、生存は絶望視されているそうです。



 なにも、聞こえなかった。


 いま、あたしはなにも聞かなかった。

 信じない。全部デタラメに決まってる。

 あの人がいなくなるなんて、絶対にありえない。

 だからこれは全部、嘘。


 非道ひどい人。なんの権利があって、この人はあたしに、こんな酷いことを言うんだろう。


 あたしは信じない。絶対に。


 あたし、ちゃんとわかってる。あなたは生きてるって。

 絶対に、生きてる。


 ねえ、そうでしょう? 翼――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
off.php?img=11
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ