第6章 幹部会議(3)
《セレスト・ブルー》のボス、ルシファーが戻ったのは、その擾乱の翌夕のことである。
4日ぶりに姿を現した彼は、どこでなにをしていたのか、あきらかに寝不足と疲労が濃く滲む、窶れた様子を見せていた。だが、翼のまえに立った冴えたその笑顔は、自信に溢れ、覇気が漲っていた。
「ルシファー! いったい、いままでどこに?」
「ちょっとな。それより、おまえこそ少しはネタ集まったか?」
「それどころじゃないよ。周りはみんな、僕のせいで神経過敏になって険悪な雰囲気だし、僕は僕で、君やレオのことが気がかりで記事をまとめるどころの話じゃないし……」
「どいつもこいつも、小心すぎて話にもならねえな」
「あのね――」
反論しようとしたところでドアが開いて、ひょっこりデリンジャーが顔を出した。
「あーら、話し声がすると思ったらボスじゃない。おかえんなさい、いつ帰ったの?」
「たったいまな。それよりデル、俺が留守のあいだに、またひと暴れしたらしいな。人死にが出たとか出ないとか」
「失礼ね、人聞きの悪い。だれよ、そんなこと言ってんの。あたしはバカが殺気立って衝突してたから、ちょっと優しく撫でて注意してやっただけよ。この細腕で、そんな凶悪なマネ、できるわけないじゃないさ」
優しく撫でた途端に6人の重傷者を生産した立派な細腕が、見せびらかすように力瘤を作り出す。彼のボスは、ふふんと鼻で笑って口の端を上げただけで、それ以上のことは追及しなかった。
「デル、なんでもいいから適当に食える物持ってきてくれ。朝からなんも食ってねえから、さっきから腹が情けねえ悲鳴あげっぱなしだ。それと、シヴァもついでに呼んで来い。おもしろいもん見せてやる。話はそれからだ」
「リョーカァイ。デルちゃん、食料とシヴァ、調達してきまーす」
命令されるほうも慣れたもので、これまた深くつっこもうとはしない。明るくさわやかに返答して下がっていった。
「ルシファー……」
「ま、そういうことだ。質問はあとで受けつけてやる」
ルシファーはそれだけ言うとゴロリと翼のベッドに横になり、あっというまに彼を取り残して夢の世界の住人になってしまった。しばらくポカンとしていた翼は、やがて深々と溜息をつくと、諦めたように小さく首を左右に振った。




