第40章 死闘(5)
「ラフ! そろそろどうだ?」
新しく相棒となった愛車を駆りながら、ルシファーはインカム越しに鋭く問うた。
「もうちょい待て! あと…少…し……、っと、オッケーだっ、取りつけ完了!」
「よし、ザイアッドと狼に連絡しろ。俺は取り逃した連中の掃討後、《Xanadu》に向かう」
「はいよ、こっちは任せときな」
「ああ、頼んだ」
言って通話を切ると、ルシファーはそのまま、すぐに別の回線に繋げた。
「シヴァか? 俺だ。そっちの様子はどうだ?」
「まもなく移送作業はすべて完了します。グレンフォードの親族のみ、ホテルの貴賓室にて現在もなお、拘禁中のようです」
「ご苦労。中央塔の爆破は、いましばらく待て。計画に変更が生じた」
その計画の変更内容について詳細を説明した後、ルシファーは通話を切り、配下の少年たちを促した。
ボスの象徴である青いバイクのあとに、《セレスト・ブルー》のメンバーたちがつづく。
彼らは直後にルシファーの命令を受けて、港湾北第7ブロックのそれぞれの場所へと散っていった。
一方、ルシファーとの通話を終えたシヴァは、それからほどなく、避難客の誘導にあたっていた《自由放任》のトップから作業終了の旨の最終報告を受けた。その数分後には、操作画面上でも移送作業が滞りなく完了したことが通知される。一連の確認を済ませたその口から、ほっと息が漏れた。
これで、本当にすべてが終わる。
安堵と、いまだ残る不安。奇妙な虚脱感が綯い交ぜになった複雑な思いを抱えたまま、彼は管制室をあとにしようと踵を返した。その際、隣室のメイン・コンピュータ・ルームにわずかに視線を向け、ひそかに死者を悼んでその場を離れようとした青年は、けれどもそこで、表情を凍りつかせた。
愕然と瞠いたプルシャン・ブルーの瞳がとらえた信じがたい光景――それは、なおもしぶとく〈神〉への栄光にしがみつこうとする、カルロス・グレンフォードの浅ましい姿だった。




