表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上に眠る蒼穹~Celeste blue~  作者: ZAKI
第2部 楽園編
187/202

第39章 崩れゆく黄金の玉座(6)

 仮設していた指令部を閉鎖したルシファーは、《Xanadu(ザナドゥー)》から引き上げにかかる準備をはじめた。コンベンション・センター内の中央広場を移動する彼の許へ、仲間の少年たちが続々集結してくる。翼たちもまた、つい先程、ルシファーと再合流を果たして行動をともにしていた。


「これからスラムへ?」

「こっちの用事はすべて済んだ。あとは軍だけだ。もう一戦残ってるが、おまえはどうする?」


 青紫の瞳に真っ正面から見据えられ、翼はおずおずと答えた。


「足手まといかもしれないけど、一緒に行ってもかまわないかな?」


 却下されることを覚悟したうえでの申し出だったが、その希望は、意外にもあっさり認められた。


「いいだろう、その目でしっかり見ておけ。ただし、俺のそばから離れるなよ」

「うん、わかった」


 頷いたとき、複数の爆音が響き、瞬く間に近づいて周辺を取り囲んだ。


「ひゃっほぉーうっ!!」


 にぎやかに驀進ばくしんしてきた暴走集団は、彼らのボスの眼前まで来ると、派手なパフォーマンスで急停止した。ルシファーは涼しげな表情で一団を迎えた。


「首尾は?」

「上々よ。ばっちり言われた場所に仕掛けてきたぜ」


 言って、漆黒の愛車にまたががったまま、ラフはウィンクした。


「スラムに戻るんだろ?」

「ああ、そうだ。こんなところに長居は無用」

「んじゃ、しかたねえ。おまえにもアシをくれてやっか」


 言うなり、彼は配下の少年たちに合図する。数台が道をあけると、そこに、青く優美な車体が燦然と輝いていた。


「ラフ……」

「しょーがねーだろー、やっぱおまえにゃ、これっきゃねえんだからよ。そのかわり、今度こそ大事に乗れよ」

「ああ、わかってる」


 ルシファーは嬉しそうに瞳を輝かせて新しい相棒に近づくと、ぴかぴかに磨かれた車体をそっと撫でた。


「ラフ、で? こいつはブリジットか? それともバネッサか?」

「ばーか! いまノりにノッてる最高の女ったら、カレンちゃんよぉ!」


黒い羊(ペコラ・ネーラ)》のトップは、得意満面に鼻の下を指でこすりながら言った。少年たちのあいだで、たちまち明るい笑い声が沸き起こった。


「なるほどな」


 苦笑混じりに納得して、ルシファーは新しい相棒に軽やかに跨った。エンジンをかけて、軽く噴かす。身体に響く重厚なエンジン音が、機嫌良く彼の期待に応えた。それに満足すると、彼は翼を顧みた。


「乗れよ」


 促されて、バイクに近づく翼にラフがなにかを放ってよこした。


「役に立ったぜ、小リスちゃんよ」


 受け取った紙くずらしきものをひろげてみれば、そこには、彼がひとつひとつ丁寧に書き記した手製の図面が描かれていた。


「なにかしたの?」

「ま、見てなって。じきにでっかい花火が打ち上がるからよ」


 ラフはニヤリと笑った。


「ラフ、招待客やマスコミの連中の避難状況はどうなってる?」

「万全だぜ、ボス。ジュールの奴が、手下ども使って順次誘導させてるとこだ」


 それを聞いて、シヴァが青いバイクの傍らに歩み寄った。その腕に、さっき合流した直後、ルシファーから預かった端末を抱えていた。《Xanadu》の心臓とでも言うべきデータが、そこに保存されていた。


「では、私は避難客を《ウィンストン》へ移送させた後に戻ります」

「ああ、頼む」


 信頼する右腕にあとを任せ、ルシファーは強くエンジンを噴かした。それを合図に、仲間の少年たちのバイクや車もいっせいに唸りをあげる。おなじように、すぐ横でバイクに跨るレオに、ルシファーは最後に声をかけた。


「レオ、腕の怪我は大丈夫か?」

「もちろん。まだまだ暴れられるよ」


 後部シートの子分が作るガッツポーズともども返ってきた頼もしい回答に、スラムの覇王は満足げに頷き、今度こそ地面から足を離した。


「よし、行くぞ」


 ルシファーのバイクが先頭を切って走り出すと、配下の少年たちは、続々とあとにつづいた。

 ルシファーの背中越しに風を切る感触が、懐かしく感じられた。


 ゲートを抜ける瞬間、翼はふと背後を振り返った。その目に、《楽園》を象徴する美しい塔が映る。燦然とそびえ立つその姿は、くっきりと翼の記憶の中に刻みこまれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
off.php?img=11
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ