第4話 食事、そして対人戦
「うむ、やはり外の景色は何度見ても新鮮なもんだな」
生まれてずっと魔王城からほぼ出たことがなかったからだろうか。
目に映るすべての物が新鮮に映る。やはり異世界に来て正解だった!
しかしそろそろ、歩き始めて数時間。
少しだけ腹が減ってきたな、村長に貰った食料でも食べるとするか。
俺は適当にきれいな場所を見つけてそこに腰を下ろす。
さて、どんなものがあるかね。
「ふむ、水はかなりの量があるな。あとこれが食料だろうか。携帯食料と書いてあるな。よし試しに食べてみるか」
俺は携帯食料を取り出し食べてみることした。
うむ、見た目はかなり質素だな。
さて、実際に口に運んでみるとする。すると、
「……なんだ……こいつは!」
それは俺が生きてきた数百年食べた事のないまずさだった。
「だめだ。せっかく渡してくれた村長には悪いが、俺にはこれは食えん……」
俺は食べかけの携帯食料とやらをそっとアイテムボックスの中にしまう。
取り出すことはおそらくないであろう……
しかし、どうするか。食べれる食料はなくなってしまった。
仕方ない、この周辺に何か食べれる物がないか探すとするか。
「{千里眼}発動」
千里眼を発動して周辺一帯を見ていく。
食べれる物、食べれる物、お!こいつなんかいいんじゃないか!
俺の視線に昔、魔王城で食べていたのによく似た魔物が見えた。
体の色は茶色で、頭に大きな二本の角。
たしか名前は、
「バルガロン、だっけか」
よし、今日の夕飯はこいつにしよう。
いま俺が見たバルガロンと俺の今いる場所はかなり離れている。
しかし、俺ならこの程度の距離など、
「3秒だ」
そして宣言通り3秒丁度でバルガロンの目の前へと移動する。
バルガロンはいきなり現れた俺に驚いて、叫び声をあげている。
さてと、まぁステータスを見るまでもないな。殺すか。
「バォオオオオオオオン」
そう雄たけびをあげ、俺に向かい突進してくるバルガロン。
ほう、俺を前にしてその気迫。中々の物だな。
しかし、
「残念だ。力が足りないなぁ」
俺はバルガロンの突進を、頭に生えている大きな角を掴むことで止めている。
バルガロンはおそらく俺のほうが圧倒的に強い事に気付いただろう。
少し怖気づいてしまったようで突進力が弱まっていく。
まぁ下手に長引かせる事もないな、そう思いバルガロンの首を手刀で落とす
首はポトっとその場に落ち、バルガロンの体は少しビクっとしたあとその場に崩れ落ちる。
「よし、食料確保だ」
俺は息絶えているバルガロンの頭と胴体をアイテムボックスに入れ、元いた場所に一瞬で戻る。
さて、では食事といこうか。
アイテムボックスから頭と胴体を目の前に出す。
「うむ、焼いてもいいがまずは」
俺はバルガロンの胴体にそのままかぶりつく。
んん!やはりうまい!
焼いて食べるのも好きだが、やはりそのまま生でかぶりつくのもやめられんな!
血もいい味を出している。血の滴る味といったところだろうか。
「やはりうまいな! 魔王城では中々こういう食べ方はできなかったので最高の気分だ!」
しかし、俺は今人間の姿のままだ。
いまこの光景を誰かに見られでもしたら、間違いなく悲鳴をあげれられるな……
まぁいいか、そう思い俺は食事を続ける。
その後ほんの数分で頭も含めてすべて平らげた。
「おっと、少しは焼いて食べようかと思ったのに、勢いですべて食べてしまったな。まぁうまかったのでよしとしよう」
ふぅ、腹も十分に膨れたことだ。
今日はここで一晩を明かすとするか。
おそらく千里眼で見た限り、このペースで歩いていけばサイアリスに着くまでに5日間ほどはかかるだろう。まぁのんびり行くとしよう。
急ぐことはない。今の俺には束縛するものなど何もないのだから。
そんな事を思いながら俺は目をつぶり眠っていく。
そして目が覚めると朝、ではなく夜中だった。
なぜそんな時間に目が覚めてしまったかというと、
「ふむ、周りに何人かいるな」
気配から察するに5人程度だろうか。
おそらく、夜盗の類だろうか。
しかしこいつら、人が気持ちよく寝ていたのに邪魔をしやがって。
少し、お仕置きしてあげないとなぁ……
「隠れている者、出てきていいぞ」
俺がそう声をかけてやると周りから5人の男が現れる。
みな、片手にナイフを持ち、こちらの出方をうかがっている。
ふむ、警戒しているのか。無意味だな。
すると夜盗達の話声が聞こえてくる。
「おい、あいつ俺たちに気付きやがったぜ! 素人じゃねえんじゃねえか?」
「馬鹿が。素人じゃなけりゃこんなところで、あんな無防備に寝るなんて真似するかよ。」
「たしかにな。こんなところに一人で無防備に。冒険者達ではありえない行動だ」
「だろ?だからよさっさと殺しちまおうぜ」
「そうだな、殺すとしよう」
そして夜盗どもはこちらに少しづつ近づいてくる。
ふむ、力の差も図れないのか。まぁいま俺は人間の姿。仕方ないか。
しかし、夜盗なら容赦しなくていいな、殺してやろう。
異世界にきて初めての対人戦だ、少しやる気を出すか。
「おいおい!あいつ戦う気かよ」
「武器も持ってねえのになぁ!強がってんじゃねえよおっさん!」
よし、やろう。
俺はまず一番奥の男に一瞬で接近する。
「まずはお前だ」
「!?」
俺は男の頭を掴み、強引にねじる。
すると男の頭はなんの抵抗もなく体から分離し崩れ落ちる。
それを見ていた夜盗達は、
「「「は?いまなにが?」」」
ふむ、どうやら状況を理解できていないのか、それともこの状況を認めたくないのか。まぁどちらでもいい、次は、
「お前だ」
次の獲物の目の前に瞬間移動のごときスピードで接近する。
すると男は、
「うわあああああああ」
完全に俺に恐怖しているようで持っていたナイフで乱暴に切り付けてくる。
残念だな、その程度の攻撃では。
「なんだこいつは!ナイフが刺さんねえ!!」
その程度の攻撃痛くも痒くもないのだよ。
むしろ俺を攻撃しているナイフが傷ついてきてしまっている。
俺は必死で攻撃している男の頭を掴み、少し力を入れる。
「ふん」
すると男の頭は綺麗にはじけ飛ぶ。
脆いなぁ。やはり人間という存在は脆い。
「こ、こいつ化け物だ!!」
「だめだ!俺は逃げるぞ!殺される」
「死にたくねえええええええ」
そう叫び、残った3人は逃亡を始めた。
ふむ、まぁ逃げるというなら逃がしてやってもいいか、いやまぁ処分しておくか。俺の眠りを邪魔した罰は重い。
「終わりだ{ファイアウォール}」
俺は男達の逃げていく方向に向かい魔法を放つ、すると。
「「「ぎゃあああああああああ」」」
ふむ、見事に3人とも消し炭だ。
それを見た俺はファイアウォールを消し、
「ふむ、まぁ綺麗に消し炭だなぁ」
さて、俺はとりあえず先に殺した2人の夜盗の場所に行き、そいつらの死体も同じように焼いていく。
「そういやこいつら夜盗だろ?もしかしたら街にでも持っていけば金とか貰えたんじゃないか? まぁいいか」
細かい事など気にしても仕方ないな。
よし、掃除はすんだ。ではもう一回寝るとするか。
俺は目を瞑り眠ろうとする。
今度は邪魔されない事を願って……
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