第1話 最強
魔王の息子、それが俺ユーラシル・アラストファー。
幼き頃から父は俺に、
「力をつけろ。力こそがすべてだ」
俺はそう言われて育ってきた。
幼き頃楽しかった思い出はない。
ひたすら血の滲むような特訓の日々。
唯一楽しかった思い出といえば友との日々。
しかしそれも父のある言葉で唐突に終わりを告げる
「ユーラシルよ。お前とそいつで殺し合いをしろ」
最初は耳を疑った。しかし父の顔を見るといま言ったことは事実であることがわかる。
俺も友も最初は戦うのを拒んでいた。
しかし父の、
「どうした?戦わないというなら俺が両方殺してもいいのだぞ」
その言葉で俺たちは戦い始めた。
戦いは一瞬だった。俺が軽く魔術を放つと友だった物は肉塊に変わり果てた。
その時俺の目からは血の涙のような物が流れていた。
父は笑い、
「それでいい。いつか俺を殺せるくらい強くなってみよユーラシルよ」
ああ、いつかお前を殺してやる。
それから数年の月日が流れる
ある大きな部屋には俺と父が立っていた。俺は無傷で父は死に体である。
「どうしましたか父上?まさかこの程度なのでしょうか?もっと力を出させてくださいよ」
俺はそういいながら適当に作った魔力弾を適当に父に放っていく。
それは俺にとっては本当に適当に作り上げただけのものだ。しかし一個一個が桁違いの破壊力を持っている。
「ぐふっ!ま、、まさかお前がここまで強くなるとはな、、」
すでに父は限界のようだった。あきれる。この程度の強さであのような偉そうなことを言っていたのか。
ふむ。飽きたなこれにも。そろそろ終わらせるか。
「これは嬉しい誤算だ。お前なら勇者を倒しこの世界を」
「もういいよ。消えろ」
俺は最後にそう言い放ちそこそこ本気の魔力弾を父に向けてはなった。
瞬間轟音が響き渡り父だった物は跡形も残さず消え去った。
「長年目標にしていた物がこの程度とはな。。」
俺の心は達成感というよりは、虚しさを感じていた。
しかし父が最後に言いかけた、勇者だっけか。そんなものがいるのか。
そいつらは俺を楽しませてくれるんだろうか。少しだけ……楽しみだな。
そこからさらに数年後俺の前には倒れ伏せた勇者一行の姿があった。
魔王軍はすでに全滅しておりすでに残っているのは俺とこの勇者一行だけ。
その勇者一行もこのざまだ。俺は力の1割程度も使っていない。
それで手も足もでないのだから笑わせてくれる……
俺は最強の力を手に入れた。しかしその先には何もなかった。
虚しさだけだ残ったものは……この世界にはもう何もない……
その時唯一力を残していた勇者一行の魔術師が立ち上がった
なにをするつもりなのか。力の差はすでに見せつけたはずだが……
「すいませんディアス。私とあなたはここでお別れです。残念ながらこの魔王は強すぎる。おそらくこいつを倒せるものは未来永劫現れないでしょう」
分かってるじゃないか。ではなにをするつもりなのか。
「しかし私には奥の手があります。一族に残された最後の魔法が」
「待ってくれメリア!それを使ったりなんかしたら君は!」
「はい。私は間違いなく死ぬでしょう。しかしもうそれしか方法がないのです。わかってください」
「くそ!わかったよメリア!君の犠牲は無駄にはしない!必ずこの世界を平和にしてみせる約束しよう!」
「ありがとうございます。ではいきます!私の生命力すべてをかけた呪文!ワープホール!」
ほう、これは初めてみるな。
「この魔法を食らえばあなたはこの世界から消失します!その先どこに行くのかは私にもわからない!」
なるほどな。違う世界に飛ばす魔法といったところか。
こんな魔法程度いくらでも抵抗できるが……
もうこの世界には何もない。ならいっそほかの世界に行ってみるのも悪くないな。
俺はわざとその魔法を食らった。……せめて次の世界は何か意味のある世界だといいな。
そうして俺の意識は途絶えていった……
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