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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第3戦/臥龍
52/112

逢瀬博務その5

 後半31分。


 なんでもないゴールキックだった。


 相手ボールになったため日本の陣形が見て取れる。左沢が残った3バック。右サイドに志賀、左サイドには大槌に代わってはいった織部。中央に佐伯、有村。古谷は高い位置に残った鹿野、鮎川のすぐ後ろだ。


 ゴールキーパーが大きく蹴りだす。

 トリニダード・トバコのFWが前をむいて走り始めたとき、マークしていた逢瀬は一歩反応を遅らせた。


 ベンチの俺は気づく。これはわざと……。


 FWは長いストライドの走りから飛びだしたマルコーニの横を狙ったジャンピングシュート……。

 だが追いついた逢瀬がシュートをブロック。湧きかけたスタンドはため息に包まれた。



 逢瀬はわざとシュートを撃たせた? ベンチにいる何人かは気づいた。

 逢瀬と近衛が口論をしている。『守り方』についてではなく、『判断』についてだ。


 CK。

 トリニダード・トバコの選手が集まってきた。

 前に残るのは……青野さんが指示をだす。「1人!」志賀だけだ。

 トリニダード・トバコのCKはこの試合初めて。それどころかさきほどのシュートが1本目のシュートだった。


 トリニダード・トバコは勝利を諦めていない。ここで1点を奪いさえすれば……。

 だが高いボールは日本の壁に阻まれる。

 跳ね返ったボール、相手選手がトラップ、しかしこれが大きい。有村がすぐ前へ蹴る。

 下がってきた志賀を狙っていた。志賀は右横に走っていた逢瀬へパス。

 みるみる加速していく。ドリブルする逢瀬に相手は追いつけない。味方さえも。

 2対2だ。だが足元からボールが離れないドリブルで逢瀬は後方の2人を引き離す。

 1対1に。

 これがセンターバックの攻め上がりか?

 もうシュートレンジだ。GKがじりじりと前に。

 ループを狙えるような器用さはない。逢瀬は。

(左横の志賀が両手でパスを要求)。


 逢瀬は。(もう他の誰も信用しない。俺が決める)。

 逢瀬は全身をひねり最速のミドルシュート! GKの頭上を狙っている!

 見るより前に音で結果がわかった。ボールがクロスバーにあたり跳ね返された。

 マジで呪いにでもかかっているのか? どうしてもシュートが決まらない。

 自分にむかって飛んでくるボールをGKウィリアムズがつかもうとする。


(すごいシュートだ。決められたと思ったが、幸運はまだこちらにあったようだ)。

(……まだ奴はあきらめていないのか? 俺はボールを見失ってなどいない)。

(ジャンプの邪魔をするでもない。しっかり助走して跳んでいる)。

(わかっていないのか?)

(わかっていないのか? 俺は唯一手が使える『ゴールキーパー』で)。

(お前は『フィールドプレイヤー』なんだ。そのお前がなんで?)

(なんで俺より先に頭でボールに触れてやがる……!)


 決勝点となったシュートを放った瞬間、逢瀬は確かに空中で静止し、ボールをゴールライン上に叩きつけていた。




 日本

    1-0

        トリニダード・トバコ

(試合終了)


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