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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第2戦/幽玄
31/112

佐伯藤政その1

 佐伯藤政(さえき・ふじまさ)

 所属チーム/広島ユース

 適性ポディション/アンカー、ボランチ

 背番号/6

 利き足/右

 学年/高校2年

 出身地/広島県

 身長/172cm

 体重/70kg

 呼称/サエキ、フジ




「レスラーかよ」と佐伯はつぶやく。

 そのままベンチに走る倉木を追いかける。

(ボランチが2試合連続の先制点。ありえないことが起こった。しかしこれは現実だ)。


(ポディションをFWからボランチに移しても得点力が落ちない。カウンターのなかで他の選手にもゴールの可能性はあったというのに、木之本は倉木を選んだ。倉木のポディションが良かったこともある。しかしあいつの存在感が木之本に選ばせたのではなかったのか)。


(この大舞台で倉木は輝いている)。


(国内の大会で発揮してきた実力はこの世界大会でも通用している)。


(だからこそ次はない。これまでのところ日本の全得点を叩きだしている倉木にこの試合次はない)。


(セルビアの注意力は倉木1人に集まる)。


(日本が追加点を奪うとしたら、それは他の選手によるものだろう)。




 さて考えよう。

 前半開始早々両チームにチャンスが生まれる流れのなかでゴールが生まれた。

 この得点で試合は落ち着くか?

 そうは思わない。

 このバタついた流れ。セルビアはすぐチャンスをつくりだすだろう。

 セルビアは攻撃型のチーム。この大会でもテスラを中心に人数をかけた攻撃でゴールを奪ってきた。

 セルビアの実力は欧州ナンバー1という称号が物語っている。プロ選手のテスラが目立ってはいるが他にも注意すべき選手はいる。

 アルゼンチンは日本に先制されたあと、無防備なほどに人数をかけ攻勢にきた。

 セルビアは先制されてもギアをいれかえないだろう。ギアをいれかえる必要はない。このチームはいつも攻撃に重点をおいたサッカーをしている。

 ともかくフィールド上どこからでもテスラの『必殺』のパスが飛んでくる。試合中の気の抜けなさはアルゼンチン戦以上だ。




 試合が再開して2分も経過していない。

 佐伯は相手の10番の動きに注目する。

(テスラはまだ日本のペナルティエリアにはいっていない。消極的にすぎる)。

 しかしアルゼンチン戦のビデオを観たらそうもなるだろう。ボルヘスですらまともなチャンスは1回か2回だった。日本のペナルティエリアは地雷原と化している。逢瀬と近衛によって。

 セルビアの2人のFWはすでにやつれた顔をしている。ボールをもって前をむけない。すぐにボールを奪われる。いや、それだけならまだしも、激しく当たられ攻め気を奪われる。まだ試合が始まったばかりだというのに。


 セルビアの右サイドバックが攻め上がる。マークする鹿野が待ち構える。

 まだビルドアップの段階。まだ何も怖くない。(セルビア選手が味方に指示をだす声)。

 しかしその選手はハーフウェーラインを越えるか越えないかという位置からボールを放りこんでくる。

 意表をついたつもりだったのか? いや、狙いは……。

 FWより10センチ以上小さな近衛だ。


 相手の狙いはこうだ。

 下がった位置で近衛に競り勝ち、ボールを頭でフリックし(角度とスピードを変える当て方)、もう1人のFWにゴール前のスペースを突かせる。これなら手間をかけずに得点が狙える……。

 だが近衛。

 空中戦なら勝てると思っていたのか?

 近衛はFWより先に走りだし、先に跳びあがった。

 クリア。

 ボールが転がった先には走りだしたテスラが。佐伯にとって想定外の動き。

(ここで上がっていたのか? ここまで後方で出し手に専念していたテスラが?)

 近衛はFWとともに倒れている。試合は止まっていない。

(まるであのときの……あいつの名を知らしめたあのゴールシーンにそっくりだ)。

 テスラは全力でボールへむかう。そのエネルギーをすべてボールにこめてくる。

 佐伯はシュートコースに体を投げ出す。

 しかし体のどこにもボールがあたる感触はなかった。

 シュートではない! テスラは横をむいて佐伯からボールを隠す。

 佐伯には何が起こっているのかわからない。


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