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暗室のなかで

 アルゼンチン戦の翌日、俺は暗い部屋のなかで鮎川と近衛に話しかける。

 この2人は頭を使ってサッカーをしている。それに話ができる奴らだ。

「計画は順調に進んでいるようだ」と俺は言う。「封印されしレガリアを得るための7つの階梯、その一段をアセンションした。なぁ鮎川」


 鮎川は答えて。「あいかわらず意味のわからないこと言ってるわねカズちゃん」鮎川は俺のことをそう呼ぶ。


「倉木は試合じゃないといつもこんななんですか?」と近衛。


「そうなの。言っても聞かないの」うんざりした表情の鮎川。


「始まり知らせ」キックオフのホイッスル。「が鳴ってまもなくのゴールであった。俺の左足がコンペンションのストリームをジャポンにチルトさせた」


「ルー大柴ですか」と近衛。


「このアインツツヴァイの活躍でな。そして『同志』たちの活躍もあり『敵』の反撃を食い止めることにも成功した。『中盤』では『敵』の動きを完全に封殺し、『自陣』では我がチームが誇る『双璧』がことごとくアタッカーを潰した」


「『双璧』ってなんですか」と近衛。


「『敵陣』で『追撃』のチャンスを迎えたがことごとく外してしまったのは問題だ。それについて何か『建議』のある者はおらんか?」


「おらんかって2人しかいないのに……それについては反省してしかりよ。私を含めFWの3人がだらしなかった」鮎川は胸に手をやる。


「いや違うね。『敵』に二の矢三の矢を放てなかったのは『中盤』の押上げが足りなかったからだ」


「俺もそう思いますよ」と近衛が答える。


「『中盤』……つまり佐伯と有村、そしてこのぉ、アインツツヴァイの『責務』といったところか!」


「まだ続いてたんですか」と近衛。


「ストライクファースト」先制点。「をとったがゆえに守りにはいってしまった。『中盤』がプラック」勇気。「をもって押しあげなかったため『個』の力に頼ったサッカーになってしまった。これは各々が反省せねばならぬ事案」


「倉木もMFです」


「反省すべきは我と佐伯、有村の3人といったところであろう。難敵と相見える前に『決着』させなければならんテーゼ。えー鮎川、それに近衛。努々忘ることはあいならぬが……」


「今度は古語なの?」と鮎川。


「しかも間違ってるし」と近衛。


 俺は立ち上がる。「次の対戦相手は東欧の王国(ブラジル)とも呼ばれたユーゴスラビアの末裔が一国。塞爾維亜(セルビア)だ。初戦を大勝で終えた波に乗るチームと戦うことになる。総員十全な準備をし戦場(いくさば)に乗りこもうではないか」


「聞いててこっちが恥ずかしくなる」と近衛。


「こういうのが好きな人だから」と鮎川。「滑ってても一切おかまいなしで。本当にイタイ」


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