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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第1戦/幸先
23/112

織部古太その1

俺はまだ走れる。


 アルゼンチンが右サイドを崩しにいく。サイドバックが前方のFWにスペースを突かせる。

 味方の動きにあわせて走らせるパスがつながらない。

 ゲームが止まった。日本ベンチは時間稼ぎの選手交代。

 主審が選手交代を認める。アルゼンチンは3分前に最後の交代枠を使っていた。これでもうこの試合に新しい選手は現れない。

 アップを済ませた最後の選手がビブスを脱ぐ。代えられるのは俺じゃない、先ほどから危険なプレーを繰り返しているFWの鹿野だ。

 審判がボードを掲げる。はいってくるのは21番の織部、下げられるのは20番の鹿野。

 鹿野はラインをまたがない。ベンチの前で監督を非難し始めた。

 こいつは俺の言うことを聞いてなかったようだ。ついさきほどボールをもった6番に危険なスライディングをかましたばかりだ。退場したら次の試合に出場できなくなる。

 早くベンチにひっこまない選手に主審が眉をひそめる。このままじゃまずい。カードがでる。

 と、近衛が演説し続ける鹿野に近づき、腹に拳をめりこませる。頭をさげた鹿野を佐伯と2人がかりで試合の外へ追いだす。

 織部はうなだれる鹿野の肩に触れてから試合に登場する。叩きつけるような声量で。

「監督からです。古谷は前に残ってDFを牽制してください」なるべく遠い位置に縛りつけて。


「了解ですぞ!」と古谷。


「僕はアリ」有村。「のポディションにはいります。アリと倉木はカヴァー。ボールを奪ったらサイドでつないでください。無理に攻める時間じゃないし確実に奪えないんならシュートも駄目です。前半みたいに『鳥籠』で時間を使って」


 俺はうなずく。「鹿野みたいな馬鹿もいるが前の奴らもよく走ってくれた。ともかく最後まで集中しよう」


「わかりました」と有村。こいつはまだ疲れていない。こんなに走れる奴だとはこれまで知らなかった。大事な時しか本気をださない奴なのだ。



 後半45分。アディショナルタイムは3分だ。

 アルゼンチンは前線に選手を集める。3人、いや4人だ。

 長身のセンターバックをあげパワープレー。その選手には逢瀬がつく。

 サイドから長いボールをいれてくる。日本は最終ラインに佐伯を加え対抗する。

 ボルヘスがボールに触れない。足元にはいるパスは得意でも、走らされるパスや足でコントロールできない高いパスは得意としていない。

 アルゼンチンの14番が低い位置で配球する。こいつは中長距離のパスが得意な選手だった。日本のボランチの前でプレーし両サイド深い位置へのパス、あるいは裏を狙うFWへのパス。だがなかなかシュートにはいたらない。

 日本自陣の左サイド、織部とアルゼンチンの選手が接触し倒れる。こぼれ球を相手にひろわれた。

 はいったばかりのアタッカーと俺が勝負。こねずにいれてくる。俺は動きを読んでボールを足にあてた。ゴールラインを背にキープ。

 奪い返しにきた相手の足にボールをあて外にだす。

 主審は今度こそちゃんと見てくれた。

 日本のゴールキック。

 マルコーニの蹴ったボールを古谷がキープ。俺、織部がボールを動かし時間を使う。

 混戦のなか相手の肘が古谷の顔にあたった。一々抗議などしていられない。

 10秒もつかもたないか。

 俺のパスが長すぎた。織部がスライディングで触れようとするも間に合わない。

 今度はアルゼンチンのゴールキック。


 俺、古屋、織部の3人が自陣に引き返す。ベンチのコーチ、選手たちが正確な残り時間を教えてくれる。(不貞腐れた鹿野は参加していないが)。「残り1分」と。

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