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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第1戦/幸先
21/112

逢瀬博務その4

 後半31分。

 アルゼンチンが2人目の交代枠を使う。運動量の落ちた中盤の選手を代えた。

 青野監督とコーチが話をする。日本はまだ交代枠を2つ残している。俺を代えないでくれと心のなかで祈った。この試合ではまだやれることがあるから。



 有村と金井、誠心高校のコンビがアルゼンチン選手をはさみボールを奪う。

 金井が風通しの良い中盤を駆ける。

 2人のFWが20メートル前方で加速。右サイドの俺にだせばチャンスになる。有村と左沢も左を走る。

 だが金井がありえないミス。俺の前にいた敵にパスを送ってしまった。

 アルゼンチンの5番が見えていなかったのか? 金井は眉をあげ驚愕している。

 カウンターのカウンター。これはまずい。

 俺も金井も追いつけない。5番はそのままドリブル。

 佐伯を十分にひきつけてから2時の方向にパス。選択肢はボルヘス。

 3人のDFは中央を固める。ボルヘスがつっこむ直前に9番が左に。近衛がつく。

 ひきつった顔の大槌が奪いにいくが腕でバランスを崩されスピードで離される。

 ボルヘス対逢瀬。

 ボールが足元から離れない。

 ボルヘスは相手を見ながらドリブル。この選手は相手の出方を見てからもっとも確率の高いプレーをチョイスできる。

 ボルヘス(左アウトサイドでぶちこむ)。

 逢瀬(左のシュートコースをふさぐ)。

 ボルヘス(一瞬静止し、オウセに飛びこませる)。

 逢瀬つきあわない

 ボルヘス(きりかえし右でまいたシュート)。

 逢瀬(反転しシュートコースをふさぐ)。

 ボルヘス(オウセの背後にはいりこむ。左でショット)。

 逢瀬(左ならもどった大槌に任せる。左がフェイクなら……)。

 ボルヘス(とみせかけ転がしインステップキック、右足でふりぬく。これで決まり……)。

 強烈な右のシュートは逢瀬のあげた太腿にあたり転がる。大槌がクリア。

(完璧に見透かされている。出方を見ながら変化させた攻撃がことごとく阻まれた。……ゴールを奪えるイメージがまったくない)。

 ボルヘスは立ち止まり地面を2秒見た。

「逢瀬の勝ちです」と近衛は言った。同時にこうも思う。(このピッチで1番才能があるのは俺でもない、倉木でもない、ましてやボルヘスでもない。こいつだ)。

 スピードにはスピードで、高さには高さで、技術には技術で対応する。

 逢瀬は相手の特性を試合中にラーニングできる。




 後半33分。ボルヘス1人の攻撃には限界がある。

 ボルヘスは単独でゴールを奪うことのできる大会最強のドリブラー。

 だが相手が悪すぎる。日本のオウセというDF。こいつもまた単独でゴールを守りきれる大会最強のDF。1対1で前をむいたボルヘスのドリブルを抑えきった。

 アルゼンチンの監督はボルヘスを諦めた。正確には彼に頼ることを諦めた。同点ゴールは誰のプレーから生まれても良い。


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