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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第1戦/幸先
18/112

志賀劉生その3

 日本は追加点ならず。

 それでもハーフタイムで話していたプランは成功に終わった。アルゼンチンは日本の攻守の切り替えの早さを恐れるはず。

 佐伯と主審、それに志賀を倒したアルゼンチンの3番がジェスチャーを交え話している。

「クールになれよ」と俺は言う。


「わかってる」と志賀は答える。「借りはサッカーで返すよ」


「いや本当に、本当に。お前の思ってることはわかるよ。『俺が一番上手いから俺が決める』だろ?」


「……違う。チームのために自分ができることをやるだけだ」


「それはいいけどよ。ヘマしたら容赦なく代えられるんだぞ。お前の代わりなんていくらでもいる」ベンチの誰がはいっても問題はない。

 志賀はうなずかないで自分のポディションにもどる。

 こいつは生粋のドリブラー。一人で突っ走りたがる性質がある。こんな大事な試合で熱くなってしまったら(動機は理解できるのだが……)。こいつがアルゼンチンのチャンスの起点になってしまうかもしれない。



 後半14分。

 もっと近い距離でプレーしよう! そうベンチで青野さんが叫ぶ。

 ボールホルダー(ボールをもった選手)に選択肢をなるべく多く与えたい。

 日本ボール。左サイドに偏った陣形。

 キープする有村がマーカーに距離を詰められる。

 佐伯にバックパス。

 佐伯は逆サイドに展開。

 またしても大槌が激走。長い距離の走りならその巨体が活きる。

 だがアルゼンチンの3番の先を読んだプレーが勝る。パスカットしそのまま大槌を抜き去る。

 その瞬間志賀がスライディング。ノータイムで奪い返す。

 しかし3番の戻りも早い(怒っている)。志賀はエリアの外で並ばれた。

 またしても3番対志賀。クライフターンで入れかわろうとするもボールの前にはいられた。

 腕を広げる3番は味方にパスをしない。キープして小柄な志賀をじゃれつかせているつもりなのだ。キーパーはやめるよう叫んでいるのに。

 馬鹿が。志賀は小柄でも獣性を有している。

 志賀が密着し見えないようにユニフォームをつかみ押す。

 3番は倒れるそぶりを見せる。主審にファウルだとアピール。

 そうくることはわかっていた。背中をあずけていたDFから離れ回りこむ。奪取。

 3番の足にかかったスライディングに倒されそうになった。ボールはまだ足元。

 志賀は撃つだろう。俺はエリア正面で足を止める。

 アウトフロントキックで遠いサイドを狙う。

 ボールはクロスバーのわずかに上。

 アルゼンチンのゴールキックで試合は再開される。



 リードしている日本が後半戦攻勢にでる。日本は攻撃型のチーム。攻撃でリズムをつくる。

 アルゼンチンボールで試合が再開する前、俺は志賀のもとに駆け寄る。

 どうしても試合に出ていたいようだ。怪我をしたというのにポーカーフェイスを隠さない。

「軽傷だろ。早くベンチに伝えろ」


「なんのことだ?」と志賀。


 DFのスライディングをよけられなかっただろう。「ちゃんと今日の試合は勝ちきるし、お前が戻ったときにチームが敗退してるってことはない」


「……わかってたか」

 シュートが外れた瞬間、麻酔が切れたように痛みが顔に現れたから。


「どっちにしろダーティなプレーは監督が嫌う」

 俺と志賀は主審に注意を受ける3番を見た。次に同じような守り方をしたらカードだろう。

「3番も大人しくなるだろう。今のはお前の勝ちだ。チームに貢献してくれた。あたぁ任せろ」


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