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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第1戦/幸先
15/112

逢瀬博務その3

 もっとも警戒すべき選手はトップ下のボルヘス。

 クラブでは右ウィングの位置でプレーし活躍している。ドリブル、ミドルシュート、スルーパス、ラインブレイク(味方のパスにあわせDFの背後へ走る動き)。この4つが長所。

 なかでも最大の長所はドリブル。だがゴールから30、40メートル離れた位置から始まるドリブルは怖くない。日本は守りきれる。



 そのボルヘスが最初に名前を憶えたのはサエキという選手だ。背番号6。位置はアンカーだろう。

 こいつは安全側の守りをする。ボールを奪いにはこない。パスカットも狙わない。

 臆病で注意深い性格なのだろう。こいつ自体は問題にならない。足もさほど速くない。

 だが問題は彼の後ろに控える2人のセンターバック。

 コノエとオウセ。これほど守れるDFが日本にいるとは。

 おそらく1週間前に対戦したフランスよりもはるかに固い守り。この2人のいる日本のディフェンスラインがより厄介だ。

 試合中に攻略することができるだろうか。前半は早くも残り5分。



 アルゼンチンボール。

 右サイドから長い浮き球のパス。

 佐伯と下がった9番が競りあう。ボールはこぼれボルヘスの足元に。

 10番はゴール正面で前をむく。前半最後のチャンスかもしれない。

 ミドルシュート? だがシュートコースを俺が埋めている。

 ハンドにならないよう腕を隠す。

 左斜めにドリブル。

 くる。

 縦と横。ボルヘスが2択を迫る。

 答えはとうに決まっている。

『横、きりかえし俺の右を抜いて即シュート』。

 ボルヘスは俺を見ている。そして超細かいタッチでボールをコントロール。

 俺の解答を読んでから答えを変える。『縦、飛び出したGKとの1対1を制し同点ゴール』。

 逆を突かれ俺はふりきられた。

 10番の回答に×をつけたのは近衛。俺の背後から現れ止める。

 ボルヘスはそこからさらに変化。右足でスライド。近衛の左足を避け体勢を整える。

 ゴールライン上で右足のクロス。

 GKを避ける高いパス。やはりビデオで観た通り右足の技術はさほどではない。右足を使わせるため俺と近衛は右サイドへボルヘスを誘導したのだ。

 11番がボールに追いつく。左サイドの深い位置。ゴールから離れた。

 左足とみせかけ右足でいれてくる(大槌がひっかかる)。4時の方向へマイナスのクロス。低い弾道。

 これが9番の後ろに隠れていたMFへ届く。ボレーで決めにいく。

 右足に正しく当てさえすれば枠内に収まる。その選手が完璧なシュートを撃つ0.5秒前。

 逢瀬にはシュートコースを予想できる。相手はニアサイドをむいているがそれはボールを見るため。くる直前、時計回りに体を開いて日本選手がいないファーサイドに流し込む。

 0.5秒後。MFがボレーシュート。

 逢瀬は倒れながら胸でボールを受け止める。

 すぐさま近衛がクリア。逢瀬が立ち上がり吠えた。


 近衛がFWに喚く。「鮎川、簡単にいれさせるな!」

 大槌が志賀に。「3番は深いところまではいってくる。ちゃんとついていけ!」

 逢瀬がみんなに。「どっからでも撃ってくるぞ、前空けるな!」



 ……今は結果だけが欲しい。

 1点のリードを守りきり前半終了の笛を迎えたい。

 佐伯が相手を倒しFK。ペナルティエリアの3メートル手前だ。

 攻めるアルゼンチンから見て左寄りの位置。11番が直接狙ってくる。

 壁の上を越えるシュートを狙うも鮎川の頭にあたった。

 ボールをひろい有村が前に残った俺にパス。

 だがしかけられる状況ではない。センターサークル内で相手DFを背負っている。

 俺は左サイドを走る志賀へ左足でパス。志賀も空気を読む。

 近づいてきた左沢へバックパス。左沢は縦にいれる。

 ライン付近で志賀が受ける。

 アルゼンチンのDFを背負いながらターン。俺にバックパス。

 俺はもどってきた鮎川にパス。

 さらに志賀、俺とパスが回る。練習でよくやる『鳥籠』のようだ。

 だが守りの圧力は練習の比ではない。

 俺はマークを外す動くのなかで倒される。ノーホイッスル。

 志賀が2人に囲まれかけ長いボールを選択。ペナルティエリアへ走る鹿野へのパスはアルゼンチンDFにカットされた。

 アルゼンチンは前線へ蹴りこむ。時間がない。ともかく前でチャンスを。

 しかし佐伯がヘディングでクリアすると同時に長い笛。前半戦が終了する。




 日本

    1-0

       アルゼンチン


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