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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第1戦/幸先
14/112

逢瀬博務その2

 中盤では勝てている。

 日本の選手は最初の1歩が早い。迷いがない動きで相手を囲む。

 アルゼンチンは遅い攻撃。

 エリア内に4人のDF、その5メートル前に俺を含む3人のボランチ。2つのラインができる。

 プレッシャーを避けたいアルゼンチンはサイドから攻める。

 10番がヴァイタルエリア(センターバックとボランチの間)、やや左寄りでボールを受ける。だがFWはマークを外していない。

 右にいる味方に横のパス。

 MFが強引に狙ってきた。こいつは中盤の仕事人。ニアに強烈なシュート。

 マルコーニがパンチングで防ぐ。

 そこからでは角度がない。何本撃たれたって問題ない。



 アルゼンチンのCK。

 レフティのボルヘスがはいってくるボールを蹴る、のではない。

 グラウンダーのボールを近くの味方にだした。ショートコーナーだ。

 嫌な予感がする。

 ボルヘスがよりゴール近くでリターンパスを受けた。ゴールラインを右手にドリブル突破。

 逢瀬がいち早く近づく。抜かれたら失点だ。

 まずい。相手に対し真正面をむいている。両足の間を狙われる。

 ボルヘスは股間にボールを通す。いや通そうとした。

 反射。逢瀬は足を閉じる。

あえて(・・・)を狙わせたのだ。防衛本能を利用した守り。

 ボールはこぼれ大槌がクリアしたが、

 弱いキックだ。タッチライン手前で止まる。アウトサイドで上手く蹴れなかった。

 MFと有村が同時に追いかける。俺は第六感を信じ自陣へ引き返していた。

 それは眼の前で起きた。

 アルゼンチン選手が先に追いついた。回りこみ前を向く。ドリブルからのパスフェイントで有村の逆をつく(対人守備が弱点)。

 その時飛び出した逢瀬がスライディング。有村は跳んで避けたがアルゼンチン選手は倒された。足はボールにむかったため笛は鳴らない。

「何ちんたらしてやがる。殺す気でやれよ!」と逢瀬。


「本当酷い人ですね」と有村。


 そんな安穏とした言葉が背後から聞こえる。俺はこぼれ球をとりドリブルを開始。

 カウンター。そしてただでさえプレッシャーのないタッチライン際。

 どこまで進めるか。

 前方の志賀は2人の敵にはさまれている。頼りにはできない。

 俺を追いかけてきた選手が止めにくる。苛立った表情。削りにくる。わざわざ相手にしてやる必要はない。

 俺は横にスライドして味方が走る時間を稼ぐ。

 右前方に大きくパス。鮎川がペナルティエリアの前まで走っている。3対3。

 アウトサイドでトラップした鮎川は右サイドからカットイン。

 俺の得点シーンをなぞるようだ。

 アルゼンチン選手が壁をつくる。シュートを撃たせない。

 鮎川はヒールパス。ドリブルで相手をひきつけスペースをつくった。

 鮎川の背後には鹿野が回りこんでいる。エリア内に侵入。

 無理に撃つなと叫びたくなる。角度がない。

 鹿野は自分を殺す。DFが詰める前にキーパーの前を横切るラストパス。

 早すぎてタイミングがあわない。志賀の伸ばしきった右足の先をボールが通過。日本に残弾はない。ないはずだ。

 しかし逢瀬博務! どうしてそこに?

 キーパーと激突しながらシュート。ボールと一緒に自分もゴールイン。

 後方からようやく主審が追いついてきた。右サイドの副審と話をする。

 逢瀬のキーパーチャージをとられた。ゴールは認められなかったようだ。

 残念と安堵、2種類のため息がスタンドから聞こえてくる。

 追加点を取り消されても逢瀬は冷静なままだ。うなずきキーパーと握手を交わす。




 どうして自陣深くでボールを奪ったこいつがゴール前に。どんな脚力だ。笑うしかない。

 スピードならチーム最速。大会全選手のなかでも最速かもしれない。センターバックのこいつが。


 そしてアルゼンチンのGK。鮎川→鹿野→志賀とさんざん揺さぶられながら逢瀬の突撃にも対応した。恐らく自分が対戦してきたなかで最高のGK。こんな奴からよくゴールを奪えたものだ。


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