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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第1戦/幸先
12/112

近衛類その3

 アルゼンチンの右サイドバックが低い位置からボールを放り込んでくる。

 ゴール前に突っ込んでくる長身の9番にはまったくあっていない。

 はるか手前で逢瀬がヘディングでクリア。

 しかしボールはまだ生きている。勢いよく走りこむMFがエリア外からシュートを放ってくる!

 だが先にボールに触れたのは近衛だ。味方のクリアボールを追いかけていた。 MFのスライディングをかわしそのままドリブルで上がる。

 アルゼンチンは中盤に人数が足りない。引いた守備になる。

 センターバックがハーフウェーラインを越える。流石にMFが食いついてきた。

 それを見た近衛はアルゼンチンのボランチがはりつく鮎川にクサビのパス。鮎川は簡単に戻す。

 近衛は右サイドの志賀に。エリア内にはFWの2人。

 志賀が選んだのはその2人ではない。

 近衛が2度目の壁パスを受ける。エリア外から近衛が転がすシュート。

 ファーサイドを狙った。

 GKは左腕を懸命に伸ばす。辛うじてパンチングで逃れこぼれ球をキャッチ。



 追加点はならず。しかし久しぶりの日本のシュート。

 アルゼンチンのGKは大声でDFに指示をだしている。シュートブロックできた場面だったからだ。

 時間をかけてからボールを蹴るのは、味方に落ち着きをあたえたいからだろう。

 2本目のシュートがセンターバック。それも流れのなかからだ。

 近衛の思いきりの良さが現れたシーンだ。こいつはいうなれば攻撃的(・・・)センターバック。読みの鋭さでボールを奪う。そしてボールのつなぎにも長けている。

 自陣に戻る近衛に有村が話しかける。「ハブられてます? ねぇ僕ハブられてます?」


「あれ有村ベンチじゃなかったんですか?」




 アルゼンチン11番がエリア外で胸トラップ。弾んだボールをボレーでシュート。

 佐伯の足に当たり変化した。枠外だ。

「空いたらどんどん撃ってくるよぉ!」とマルコーニ。

 最後に触ったのは日本の選手。

 CKになる。前に残るのは俺と志賀の2人。

 アルゼンチンは10番が蹴る。

 ボールはニアサイドを守る近衛の前に。マークするFWより先に跳んだのは、相手の動きを阻害するためではない。

 単純に相手より高く跳べるからだ。

 近衛がヘディングでクリア。しかし、

 ゴール正面にボールがこぼれてしまう。11番が再びミドルシュートを撃ちにくる!

 近衛は着地後迷わずにボールを追いかけてきた。猟犬の本領。シュートは頭に当たりこぼれたところ、有村が前方に大きくパス(俺がキープ)。

 相手の攻勢は潰えた。




 日本のサッカーには『しのぎ』の文化がないといわれてきた。

『しのぎ』……要するにリードしたあと相手の攻撃を『しのぎ』きれるディフェンス力があるかどうか。

 相手の時間帯が続いたとき。あるいは人数をかけた攻撃を受けたとき。

守る側の選手はストレスを感じる。精神的動揺からミスをおかすこともあるだろう。


 日本のサッカーはパスサッカー。ボールをなるべく長い時間支配し、確実なつなぎから崩してゴールを奪おうとする。相手の攻撃にはポディション関係なく全員守備で対抗する。

 裏を返せばこうだ。

 センターバックに優れた選手がいないという弱点をカヴァーするため、相手の攻撃回数を減らさなければならない。ゆえに『ボールをなるべく長い時間支配し』なければならない。

 個人で守りきれるDFがいないために『ポディション関係なく全員守備』、人海戦術を用いなければ失点を防げない。


 日本のサッカーファンの間でFWの『決定力不足』が話題になることがあっても、優れたセンターバックがいないことはなかなか話題にならない。

 もし世界レヴェルのセンターバックが日本からでてきたら。

 チームの失点数を半分にするような才能がもし存在するとしたら。

 それだけで日本の序列は大きく上昇する。相手にゴールを奪われなければ少なくとも『負け』はない。『引き分け』が『勝ち』になり勝利がより手堅くなる。

 近衛類は最強のスイーパー。17歳にして日本サッカー界最高の知性を有し、5秒後10秒後の展開を正確に予知する。味方のカヴァーリング、敵の飛び出しへの反応。

 近衛がいる限り相手はシュートさえ撃てなくなる。先ほどの宣言通り、アルゼンチンの1番の脅威になっているのはこの選手。


 そしてアルゼンチンのアタッカーが注意すべきなのはこの選手だけではない。

 日本のキャプテン。もう一人のセンターバック逢瀬博務は近衛と双璧を成す守備力を誇る最強ストッパー(・・・・・・・)だ。


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