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最強プレイヤーが代表チームを率いて世界一を目指す話(旧題/日本サッカー架空戦記)  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
グループリーグ第1戦/幸先
11/112

近衛類その2

 相手のディフェンスラインが高い。ボールを奪うと縦に早くつなごうとする。

 前半のうちに同点に追いつきたいのだろう。ベンチの采配ではなくアルゼンチンの選手たちの意志がそうさせている。

 アルゼンチンのターンが5分間続いたことで、攻撃の志向がわかってきた。

 相手はペナルティエリア正面からの崩しにかかっている。

 縦16.5メートル、横40.3メートルのペナルティエリア。

 シュートするためにはこの長方形の3辺のいずれかからゴールに近づかなければならない。

 日本の先制点。左沢のサイドチェンジから俺が2人をかわしミドルシュート。アルゼンチンの正面の守りを文字どおり蹴破ってみせたものだった。

 アルゼンチンもまた正面、ペナルティエリアの長い横の辺を崩し同点に追いつこうとしている。


 前半13分。

 アルゼンチンの攻撃。

 中央からパスをつなぐ。

 DFからセンターサークルで待つMFに縦パスがはいる。

 そこから10番へ。まだ後ろをむいている。同じ選手とワンツーで前をむいた。

 アンカーの佐伯は奪いにいかず距離をとってマークする。

 ボルヘスは典型的なドリブラー。1人で奪いにいけば抜かれる。何度も監督に注意されたことだ。

 佐伯はドリブルさえ防げば良い。

 ボールをもったボルヘス、佐伯。その前方に11番、近衛が並んでいる。

 11番は背走しながら足元をしめす。サイドバックの左沢がもどっていない。右側に無人の空間ができている。

 その空間を使うのは今ボールを運ぶボルヘスだ。パスアンドゴーで佐伯をふりきり右サイドを走らせる。ラストパス。DFの裏をとってシュートを撃たせる。

 狙いは10番→11番→10番。11番が時間とスペースをつくり10番がしとめる。

 近衛はその流れを完璧に読みきった。ならその前に奪取できる。

 ボルヘスは11番にパスをだす。

 直後立ち止まった11番を近衛が追い越す。(背後にいるはずのDFが前に!)

 近衛がスライディングでボールをカット。もどってきた左沢にボールが渡る。

 ボルヘスのパス、11番のパス、ドリブル、シュート。『詰め』の4手前でアルゼンチンのチャンスを潰した。



 味方へのパスを通せなかったボルヘスが近衛を見る。

 厄介なDFだ。いとも簡単にインターセプトされた。10度チャレンジしても10度潰されそうだ。これで何度パスをインターセプトされただろう。

 ボールが足元を離れた瞬間猟犬のように喰らいついてくる。こいつのテリトリーではドリブル以外の選択肢がとれない。

 そして性格。嫌な奴なのはわかる。

 相手を馬鹿にするような眼つき。見るだけでイラついてくる。ボールを奪ったときだけ口を横に伸ばす。自然な笑顔ではなくこちらを見下す笑みだ。そしてスペイン語で「グラシアス(ありがとう)」と。明らかに煽っている。

 試合が終わったあとに握手なんてしたくない。不快ですらある。

 チームメイトが近衛を避けるようなポディションをとり始めた。

 日本にこんなセンターバックがいるとは……。


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