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はじまり

「久しぶりだな、背が高くなったか?総司」


「お久しぶりです。相変わらずデスクワークに追われているようですね」


──ここは日本中にある祓魔機関の本拠地。

目の前にいるこの男性は、祓魔士の制服をしゃんと着ていて姿勢が良く、

40代のおじさんではあるがどこか格好いい。

安心するような穏やかな声とすべてを包むような優しい笑顔。

まさに理想の父親、という感じだ。


「1つ、お願いがあってな。

断ってくれてもいいんだが、総司が一番適役かと思って」


「どんな内容でしょうか。」


僕が内容に興味を示したのが嬉しかったのか、にこにこしながら男性は話を続ける。


「神宮寺と一緒に暮らしている那美という少女は聞いたことあるだろう。

厄災の日が近づいているため、魔が増加している。

神宮寺は六人将の一人として感知の仕事に追われている。

そのせいで那美と一緒にいてやれないようで、歳の近い総司に世話役を頼めたらな…と思ったんだ」


「一人暮らしですし、それは全然大丈夫です。

それに、長官である八条正道さんに頼まれたとなれば断れないですよ」


そう、この人は祓魔機関の長官、まあ、トップであり、六人将の一人。

若い頃から才能を認められ、41歳という若さでしっかりと職務をこなしている。


祓魔士は上級、中級、下級にランク分けされており、そのランクに見合う指令がおりる。上級祓魔士の中でも飛び抜けて才能があるといわれる六人を六人将と祓魔機関の中では言われている。


僕は六人のうちの一人ではあるけれども、18歳なので20歳以上という条件を満たしていないから上級ではなく一人だけ中級祓魔士だ。本当は18歳で中級祓魔士になるのも前代未聞だったらしい。


「那美は神力が強いため、魔を引き寄せやすい。

彼女自身でも大丈夫とは思うが、留守番は寂しいだろうし、

万が一の時守ってもらいたい。

歳はちなみに16歳。明後日から祓魔士養成所に入ってもらう予定だ。

彼女にはお前の家を教えるが、いいな?」


「はい。わかりました。では、失礼しました」


一礼して退出したのだった。





「これで本当によかったのか?

そんな狭いところに隠れてないで話せばよかったのに、神宮寺」


部屋においてあった棚から後輩である神宮寺理沙が出てきた。


いつものように着物を着ている。決して派手な着物ではなく、うぐいす色の落ち着いた色だ。そしてそれが似合っている。


「やっぱり気づかれていたのね、正道さん。

感知の仕事が忙しくて一緒にいてあげられないし、

それに、須賀 総司くんと那美は出会わないといけないと思うわ。」


落ち着いた表情で言っているものの少し寂しそうだ。


「どうせ寂しいんだろう。

ついでにいうと総司と那美は息が合いそうだな、世話好きとドジ天然」


「そうね。でも、方向音痴の彼女が総司の家まで辿り着けるかどうか心配でならないわ」





お茶碗や小皿、布団一式は一応揃えることができた。

晩ごはんの材料は買ったし、ちょっとした歓迎会でもできたらいいな。


ふら、ふら、ふら、目の前を段ボールを抱えた少女が通りかかった。暖かそうなコートとマフラーを着込み、可愛らしい印象だ。小学生ぐらいだろうか。そして、見ててこっちがそわそわしてしまうほど危なっかしい。


するとまもなく『すってんころりん』という感じに少女がこけた。


咄嗟に走って近づいて声をかけた。


「大丈夫!? 結構血が出てるね、お兄ちゃんの家、すぐ近くだから手当てするよ!」


「うぅ、痛い、」


少女は必死に涙をこらえている。すぐさま少女をおんぶし、彼女の段ボールも抱え、自分のアパートへと走った。



「ほら、もう消毒したからまだ痛いだろうけど、感染症とかの心配はないよ。他に痛いところない?」


「お兄さん、ありがと!恩人だよ!!この恩はたぶん、忘れない」


「泣かなくて偉かったね、

ところでそんな大きな荷物抱えてどこにいってたの?」


「えっと、人のお家でお世話になることが決まって、荷物もって引っ越ししてたんだけど、いつのまにか迷子になってて…」


少女はしょんぼりとうつむいた。


「何ていう人のお家?調べてあげれると思うけど」


祓魔機関の地図ならすぐ見つけられるだろうと思い、携帯端末をとりだす。


「えっと、須賀…総司さん、かな?」


「須賀総司ね、………………須賀総司って、僕だよ


もしかして、伊勢 那美ちゃんですか」



「そうだよ!え、お兄さんが、総司さん………!?」







「ほら、どうぞ、ホットミルクだよ。気に入ったらいいけど」


「好きだからありがとう!」


ふぅふぅしながら少しずつ暖かそうに飲んでいる。

まだ少し動きがぎこちなく感じる。緊張、してるのかな。


「ひとまず、自己紹介をしようか、

僕は須賀総司。訓練生だけど、一応中級祓魔士だよ

えーっと、血液型はA型。趣味は、料理を作ることかな、

総司って呼んでくれると嬉しいかな。那美ちゃんは?」


「私は、伊勢那美。この前、中級祓魔士になったらしい。

明後日からは総司とおんなじ訓練生!!

趣味は、ふわふわのものをもふもふすることと、絵本

あ、私も那美って呼んでねー!!」


いけない、どうしても16歳には見えない。小学1年生だ、絶対。

あと、びっくりしたのは、自分以外に中級祓魔士が増えたことだった。この子はとても優秀なんだろう。


「そこまでここのお家は広くないから部屋はあげられないけど、この部屋を出てすぐ右の部屋の一角に荷物は広げてかまわないよ

もう6時だし、僕は晩ごはんの準備しようと思うから、その間に荷物整理をしてるといいよ!」


「ありがとう!りーさちゃんみたいにやさしいね!」


「りーさちゃんって、神宮寺さんのことかな?

あ、和食とか洋食とかどっちが好き?好みに添えるようがんばってみるけど」


少し考えるような素振りをして、


「りーさちゃんは和食ばっかりだから、洋食を食べてみたいな!

ハンバーグとか!それじゃあ、整理してくる!!」


目を輝かせて那美は段ボールを持ち上げた。


「あ、待って、段ボールは僕が…」


ずてーんと思いっきり那美はこけた…





「エプロン似合ってる!」


トコトコと那美がよってきた。


「荷物整理おつかれさま。さっきの怪我は大丈夫かな?」


「大丈夫だよ!なにか手伝うことある?」


なにか野菜とかを切る。→怪我しそう。

炒めたり煮たり調理。→火傷しそう。

お皿を運ぶ。→こけてお皿がなくなる。

なににしよう、どうしよう。この子なんでも怪我しそう。


あ、1つあった。


「そこのレタスを洗っててくれないかな?」


お手伝いが出来るのが嬉しいようで、鼻唄を歌っていた。




「いただきます」


「美味しい!ハンバーグってすごいね!!」


お箸を入れて開くと肉汁が溢れ、お肉の味もしっかりするように工夫したつもりで、とにかくこの笑顔を見るためにたぶん僕は一生懸命作ったんだと思う。


もう、緊張もほぐれてるようでよかった。


「そういえば、正道さんや神宮寺さんと仲が良いのかな?」


共通の話題といってもこれぐらいしか思い付かなかった。


「うん、まさみっちゃんは私が3歳の時、神社にお世話になってて、その時会いに来てくれたの!!あと、りーさちゃんはまさみっちゃんの紹介で一緒に暮らすようになった!!あと、神楽ちゃんとか姫ちゃん、かげちゃんも仲良いよ!」


「そうなんだ、ということは僕で六人将はもう友達としてはコンプリートしてるんだね。」


こくこくと頷いてから話す。


「いつもみんなお菓子とかくれるし、優しいよ!

あ、ごはんおかわり!!」


いつのまにかお茶碗が空になっている。

僕の家を探すため歩き回ってお腹すいてたんだろうな。


「はい、どうぞ」


那美は美味しそうに、嬉しそうにごはんをほおばっている。


「そういえば、趣味が1つ増えたよー!」


「どんな趣味かな?」


よくぞ聞いてくれた!!とアフレコしたくなるぐらい元気にいっぱいに胸を張ってこう言った。


「総司の料理を食べること!!」



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