日常徒然
11月も終わり私の大嫌いな12月に入った頃に少し変な夢を見た。
絵本に出てくる魔法使いのようなローブを被った老婆が、手招いて如何にも悪そうな顔で何か言っていたのだが私がずっときょとんとしているのを見て何処か残念そうな顔をして去って行ってしまった。
アレは一体何だったんだろうか、と私は少し思案したがよくよく考えると夢なんて物は意味が分からなくて当然だ、と結論を出して頭の隅っこに押し込んだ。
朝は忙しいのだ、こんな事で時間を喰ってはいられない。只でさえ朝に弱いのに、余計な事をしていては遅刻してしまう。最近はどうも眠りが浅いせいか、寝不足なのだ。ニュースを適当に見ながら、朝御飯を口に詰める。どうやらこの街で通り魔が出たらしい、幸いにも被害に遭った人物は大きな怪我も無いらしいが、犯人の姿を何一つ見ていないらしい。不幸中の幸い中の不幸、と言ったところか。全く、物騒だな……。ふと、時計を見るともう出ていく時間だった。
そうして私は急いで家を出た。冬は嫌いだ、何か理由が有るのかと言うと、ただ単純に寒いから。私こと遠坂紗耶香は寒さに弱いのだ。
ずっと春ならば良いのに、と思うのだが残念ながらこの世界はそう単純に出来ていない。と、無駄な思考をしながら登校する内に高校に着いていた。うちの高校何故か無駄にでっかくて西洋風で地元人の達からは「城」やら「教会」などと渾名されていた。お陰で階段を登るのも一苦労だ。まあ、それでも一年の時よりはマシなのだが。
ようやく教室に着いて真っ先に、暖房の前に陣を取った。ホームルーム迄何をしようか…と考える。
「おっはよう!紗耶香!」
「ああ、おはよう。瑞希。」
この横から話し掛けてきた、如何にも元気ハツラツです!といった感じショートカットの少女は、私中学からの友人の橘 瑞希だ。今日はまた、一段と元気そうだからまた新しいネタでも発見したのだろうか。
「おっ!また新しいネタでも見つけたのか?って顔してるね!でも、その通りだよ!」
どうやら、彼方の方にも私の心情は筒抜けらしい。
「で、今度はなんなのさ?どんなオカルト?」
そう、この少女は無類のオカルト好きなのだ。そして都合の良いことにこの街ではそういった現象やらが多数起こっているらしいのだ。空を飛ぶ少女、だとか、奇妙な着物を着た深夜に現れるさ迷える地縛霊だとか。
……らしい、というのは私がそういった現象にこれといって対面した事が無いのからだ。そういった怪奇に被害にあった人は稀だが、目撃した人数だけに限るならかなりの人数に及ぶらしい。
「なんかねー。変な格好をしたおばあちゃんにお前は大丈夫なのかー?って聞かれるらしいよ?」
「それ、ただのボケたおばあちゃんなんじゃないの…?」
とても、怪奇現象には思えない。まあ、嬉しそうに話してるのだからそれ以上は言うまい。
「あ、それより朝、ニュースでやってたけど、最近、通り魔がいるらしいじゃない。瑞希、部活で結構遅くなるし気を付けなよ?」
「あー……、うん。紗耶香も気を付けてね?」
この反応を見るに、どうやら瑞希はそういった関連の話は苦手らしい、さっきまで元気だったのが意気消沈している。
うわー、この話題を出したのはちょっと失敗だったかな…。
そう思い話題を変えて、少し話した所でホームルームの時間になった。
そして、私の今日の1日は他に語る所も無くつつがなく過ぎていった。
今、思うと、これは私が怪奇に無関心にいられた最後の日だったのかもしれない──。
感想,批評どんな些細な事でも指摘して頂けたら幸いです。
地の文って難しいですね(汗