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三月


 久しぶりに神社に行く。結果報告と、ひめちゃんに会いに。

 しばらく顔を出せないって言ったけど、いつもあそこで遊んでるみたいだし、たぶんいるよな。

 思った通り、ひめちゃんはいつものところにいた。賽銭箱の後ろの階段に座っていた。俺と目が合うとにこりと笑った。


「お兄さん、こんにちは」

「久しぶり」


 挨拶もそこそこにお参りをする。それから、ひめちゃんに笑いかける。


「大学に合格したんだ。この神社のおかげだね」

「おめでとう」

「家から通えるところに受かってよかったよ」


 俺はやや興奮気味に話していた。小学生に言ってもわからないだろう。でもこの喜びを誰かに話したかった。ほら、俺、友達いないし。


「お兄さんに会えるのはこれで最後」

「え、なんで。確かに頻度は落ちるけど、また来るよ」


 これからもゆったりとした息抜きの時間は持つつもりだ。この神社で、週一で話して、一緒に掃除して。

 そういえば、ひめちゃんのことを聞いた記憶がない。一方的に喋ってばかりだった。これからはそっちの話も聞かせてよ。知らないことばかりなんだ。

 このへんに白山なんて苗字の家はない。朝早く来ても夕方来ても平日に来てもずっといるひめちゃん。不思議な子だな、と思考停止してたけど、本当は聞きたかった。君は何なの。


「わたしの見習い期間が終わるから」

「どういうこと?」

「お兄さんにたくさんの縁がありますように」


 にこにこ笑う。いつもの控えめな笑顔ではなく、とても慈悲深いように見える。子供なのに、母親のような。俺はロリコンでもマザコンでもないぞ。

 それ以上、何も教えてくれなかった。


 その後、ひめちゃんを見たことはない。


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