一月
雪が積もった。雪だるまを作るには十分だ。
コートを羽織って、外に出る。
「お兄さん、がんばれー」
賽銭箱の後ろから応援の声がする。
「ひめちゃんも手伝ってよー」
「持てないから無理ー」
確かにいま作ろうとしているのは結構大きいものだから、小学生に作らせるのは難しいかもしれない。せっせと雪を集めて作業を進める。内側は泥が混じった汚い雪玉でもいい。最後に新雪でコーティングして綺麗な雪だるまの出来上がりだ。テレビでやり方を見た。
センター試験が終わった。それなりにできたと思う。自己採点で見た志望校の判定はBで、これならいけるだろうと、担任の許しも出た。あとは二次試験に向けてラストスパート。受けるのは総合問題。国語も英語も得意だし、数学がちょっと不安だけど、なんとかなる気がする。気がする、だけで油断してはならないのだが。今日くらいは遊ばせてくれ。
「できた!」
「わぁ」
俺の身長よりは少し小さい雪だるま。ひめちゃんよりはかなり大きい。彼女は目を輝かせて見ている。
ちょうど賽銭箱の横に作ったから、守り神みたいになった。賽銭泥棒とか、いるみたいだし、泥棒除けということで。
最近はぽつぽつと人を見るようになった。新年だからかな。秘密基地がばれたみたいに、少し残念な気持ちがあった。
「すごいね」
「だろう」
自慢げに相槌を打つ。子供相手に何やってんだ、俺。でも頑張ったし。綺麗にできたし。
「ひめちゃん」
「なあに?」
「来月はここに来れない。勉強に集中したいんだ」
「そうなの。頑張ってね」
あっさりしてるなぁ。こっちが淋しくなってしまう。
俺がいなくなってもあまり関係ないのかも。ひとりでの遊び方を知っているみたいだし。こっちがたえられなくて来ちゃったりして。そんなことないように頑張らなきゃ。ひめちゃんも応援してくれているし。
よし、最後まで全力だ。