異世界から美形がきました
特になにもない、ごくありふれた一日の終わり。
のんびりと家に帰り着いた少年は、制服のネクタイを緩めながら、家の前にたった。
今日は、家族が留守で、一人きり。さて、なにを食べようか、出前をとってもよいと許可はもらっているし、一旦着替えて食べにでてもいい。
少しばかり楽しい気分になりながら、扉をあけた――そのとき。
「……っ」
まばゆい光が、まるでフラッシュのようにあたりを照らし出して。
あまりのまぶしさに、少年は強く目を瞑って身構える。
段々と薄れていく光の中、霞む目を何度も瞬かせながら、焦点を結ばない目を凝らす。
と。
そこには男が一人、うめきながら倒れていた。
「……っ、な!」
男の姿は、異様だった。なんのコスプレ? といいたくなるような、マントに豪奢な騎士のような衣装。よろいこそ着けていないものの、傍らには剣が落ちている。
少年は、あまりのことに、思わず数歩後ろへと下がる。
人の気配を感じたのか、目の前の男は低く呻いて、やがてゆっくりと顔をあげた。
金色に輝く髪。ゆっくりと開きこちらを見る瞳は、空のような美しい青。整った顔というのはこういうのをいうんだな、と思わず考えてしまうほどの、美形がそこにいた。
「……ここ、は」
美形の声は美声らしい。訝しげに眉を寄せる、どこか野生味すら備えた美形は、こちらを鋭い視線で見詰めてきた。
「おまえ、なにもの、だ」
おまえがだれだ! と内心焦る少年。
起き上がってこちらに来るのかと、身構えるものの、その男は身動きできないらしい。
「……っ、そうか、ヤツらから逃げて、界渡りしたのか……くそっ、ノルティアめ、必ずこの恨み晴らしてくれようぞ!」
聞いてもいないのに一人でなにか怪しげなことを呟く美形。
触らぬ神にたたりなし。
少年はひとつ頷くと、そっと扉を閉め、鍵をかけた。
扉の向こうで、なにかいっているのを確認しつつ、携帯を取り出し電話する。
「あ、すみません! 今家に帰ってきたら変な人が玄関の中にいるんです! 妙な格好で妙な剣みたいなのもってて! 今日家には家族いなくて、はい、はい。わかりました。おねがいします!」
電話をきってほっと一息。扉の向こうから聞こえる掠れた罵声をBGMに、万が一の時にははしって逃げられるようにしながら、少年はパトカーの到着を待つのだった。
(ああ、春だからネェ、変な人もでるようだよ)
(ありがとうございました、助かりました)
きっと警察で取り調べられる。最終的にどういう扱いになるのか不明。留置所には入れられるだろうけど、刑務所レベルではないよね。不法滞在扱いになるにしても、国籍が調べられない。ある程度の圧迫尋問かけられても余裕で交わしそうだし。ああ、反対に暴れて、公務執行妨害取られてもいいと思う。
うん、私の脳みそ酷い。