イケメンくんに結婚前提のお付き合いを申し込まれるなんて夢にも思わないよね。
「俺と結婚前提にお付き合いしてください!!!」
きっとこれがもし私が20代で結婚に対して憧れを持っていたり、ひょっとして私のことが好きなのかな?という気がつくような素振りがあれば嬉しかったり喜ぶだろうけど・・・・。
「え、、、、、私?」
私の後ろにいる両親が息を潜めているのがわかるし、パートのおばちゃん達も気配を消そうとしつつ行方を気にしているのがバンバン伝わってきた。
いや、、今日花を取りに来るって言ってただけだよね!?
物凄く綺麗なお辞儀をして私の返事を待っている彼を見ながら、予想を遥かに超えた発言にパニックになっていた。
「ちょ、ちょっと彼の車まで花を持っていくわ〜・・・。」
私は彼の腕をガシッと掴み、作業場から見ているだろう両親やパートさんを見ずにズカズカと歩き出した。
「す、すいません!俺場所を考えず口走ってしまって!!」
「いいから!とにかく君の車まで歩くよ!どこ停めたの?」
私の家の農園は普通車では通れない細い道で、軽自動車でもちょっとでもミスれば溝に落ちるか、田んぼの柵で傷が出来てしまうような場所で、少し歩く場所に車を置かなければいけないのだ。
「え、えーと海沿いの近くの墓地の近くです。」
私はあそこかと納得しつつ、ガシッと掴んだ腕を離さずズカズカと歩いて作業場から私たちが見えなくなるところまで無心で歩いた。
私は作業場が見えなくなったのをチラッと確認して、彼のガシッと掴んでいた腕を離した。
「どういうつもり?」
「す、すいません・・・。」
「え、なに?罰ゲームかなんか?」
それだったらそれでもいい。笑い話になる。
「今時そんな罰ゲームないっすよ!」
「え、、、違うの?・・・いや、でも待って、え?」
いや、、、でもそうでなければそもそもの認識が違うことになる・・・。でも友達は確かに・・・。
「香織さん?」
私が考え込んだ表情をしていると心配そうに見てくるイケメンがいて、嬉しいはずなのに頭がパニックになっていた。
いや、これは本人に聞くしかない。
「いや、違ってたらごめん。私あなたのこと恋愛対象は男性って聞いてたんだけど。」
「えっ・・・、知ってたんですか。」
やっぱり。
「うん、ごめん。だからさっきの告白にちょっと混乱しちゃって。でもあの場でこのこと聞くわけにもいかなくて。」
ここは田舎町だ。噂は一瞬だし、こんなネタ、広まらないわけがない。
「やっぱり、優しいっすね。香織さんは。」
「え?」
「ここで聞いてくれたってことは俺がゲイだってこと、聞いてたのに内緒にしてくれてたってことっすよね?初めて会ってから1ヶ月経過していたのに。」
そう、彼が言った通り、実は会うのはこれが2回目だったりする。だからこそ尚更驚いたというのもある。しかも1回目も本当に対して喋ってない。
「いや、まぁ言う必要ないかなって思って。本人から聞いてもなかったし。本当のことなのかも、言っても良いことなのかも。」
「はぁーやっぱ好きっすわぁ香織さん!」
両手で自分自身の顔を隠しながらイケメンくんがとんでもないことを言ってくるので、いくらその意味が恋愛対象としての言葉でなくてもちょっとドキドキしてしまった。
落ち着け。今年アラフォーになったばかりだろ!自分!!!!!!
「いや、嬉しいけどさ。それはあれでしょ?人間的に好き的な意味でしょ?」
「はい!」
早っ!いやまぁ、恋愛対象じゃないことくらい分かってるけど。
「だよね。だからさっきの告白は何?なんか困ったことでもあったの?」
罰ゲームでなければ、もうこの線しか思い浮かばなかった。




