7話 何回来ても飽きないお城
それにしても暑い、7月は夏だから当然だとはいえ、太陽の熱さと太陽に熱された地面から伝わる地熱との熱気のコンボは私の体力を吸い取るのに十分すぎるほどだった。
この暑さでは携帯式の扇風機も効果はそれほどなく風があるからマシなだけの代物とかしていた。
流石に楽しそうにしている楠木さんも少し暑さで火照っているようだった。
「流石に休憩しよっか?」
そう口に出したのは楠木さんからだった。
私としては拒否する理由もない。
私は頷くと、楠木さんはすでに休憩する場所を決めていたようで
「こっちだよ。」
と私を促した。
100mほど歩いた先にガラス張りの市営の総合ホールのような場所で幾つかの食堂なども入っている施設だった。
冷房の効いた施設に私は思わず
「助かったぁ・・・」
汗を拭うと近くのベンチに飛びつくように座り込んだ。
楠木さんも流石に一息ついて
「いやー、暑いねぇ。」
とハンドタオルで汗を拭うと、水筒のアップルティーを口に含んだ。
私も電車内で楠木さんに貰ったアップルティーを勢い良くゴクゴクと飲むと美味しさと冷たさで思わず感動してしまう。
「暑いから余計に美味しいわ。」
私がそう言って感動すると、楠木さんは美味しいと言って貰えるのが嬉しいのか、ニコニコと私がアップルティーを飲むのを眺めていた。
「そのアップルティーも量が限られているし、この暑さだからここでお水を補給していこうね。」
楠木さんもそう言いながらもう一杯アップルティーを口に含む。
「菊池さん、実はこの休憩は実は予定通りの行動なのです。」
楠木さんが改まった感じでそう言うが何となく分かっていた私には驚きはなかった。
「楠木さんが慣れた感じで入っていったからそんな気はしてたよ。」
「そっかぁ、じゃあ、もうちょっと体を冷やしたら屋上に登ろうよ。私が姫路に来たら必ず立ち寄る場所なんだ。」
楠木さんは何度目の姫路城なんだろう。
この言い方だと何度も姫路城に来ているんだろうなあと想像できる。
「一度や二度じゃないとは思ってたけど、楠木さんって姫路に来たのは何度目なん?」
「うーん?よく分かんない。お城巡りを始めてからは最低でも年に3度は来るから結構来てるかも。」
そう言って指折りながら数えだした。
他のお城を巡りながら、年に最低でも3度なら相当姫路城に慣れているはずだ。
(ネズミーのプロもわざわざ年間パスポートを買って何度も来園してるらしいし・・・そう思えば楠木さんは駅で『ネズミーも良いけどお城も良いよ!』と言っていたけど・・・ここはネズミーや!楠木さんにとってのネズミーなんや!)
私は妙な納得感を得ると、楠木さんの気持ちをほんの少しだけ理解できた気になったのだった。