表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

3話 恥かきステーション

 電車に乗るのは本当に久しぶりだ。

 普段は自転車か姉の車に無理矢理詰め込まれての移動がほとんどなので、電車に乗ることは稀なのだ。


(そもそも満員電車に乗るのが嫌で自転車で通学できる範囲の学校を選んだんやから・・・)


 そう心の中で独り言ちた。

 姉は休みの日の早朝から外に出掛けようとする私を見つけると急にオロオロと落ち着きをなくし


心音(ここね)ちゃん!私から逃げるの!?いやあああぁぁん!」


 と涙をポロポロと流して取り乱し、大変迷惑だったので大慌てで


「ちゃうちゃう、友達と遊びに行くねん。」


 と頭を振った。

 すると今度は姉は大喜びして


「心音ちゃんを早朝から連れ出してくれる、お友達が遂にできるなんて!」


 そう驚いてサンドウィッチを急いで作ると


「朝早くから活動したらお腹空くからお友達と一緒に食べるのよ。お姉ちゃんは大学のお友達がいるから、さみしくないんだからね。」


 などと言って、小さなリュックを私に持たせて、まるで出征する兵隊を送り出す母親のように私を送り出してくれたのだ。

 しかし、よく考えると私に友達が一人もいないみたいな姉の言いざま、思い出すとムカムカしてくる。

 確かに私は根が明るい割には冗談とか言い合う知り合いとかは多いけど、深く付き合う友達は少ない。

 だけど姉の言いざまじゃ今まで友達が一人もいなかったみたいじゃないか・・・


「なんて失礼なっ!」


 私は心の中で湧き上がった怒りを抑えきれずに遂に声に出してしまう。

 隣で大人しく電車を待っていた楠木さんは突然の声にビクンと反応して、私の顔を怪訝な顔で見つめてきたのだ。


「ち・・・ちゃうねん・・・」


 私は恥ずかしさで顔に血流が集中するようなそんな熱さを感じていると急に楠木さんがクスクスと両手で口を抑えて笑い出したのだ。


「あかん・・・恥ずかしすぎる・・・」


 泣きそうになりながらそう呟くと楠木さんは笑いをこらえて


「ごめん・・・菊池さんってやっぱり面白いね。」


 そう言って謝ってくれたけど、きっとまだ心の中で笑っているはずだ。

 だって肩が小ギザミにプルプルと震えているのだから。


「お姉ちゃんのあほぅ・・・」


 私は小さく恨み言を呟くのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ