表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/107

第4話「百万石の嘘」



■Scene 1 —— 金沢へ帰還、祭の賑わい


6月、金沢。

富山での事件を終えた美琴は、北陸新幹線で再び金沢へ戻ってきた。

この日は年に一度の「金沢百万石まつり」の初日。金沢駅から鼓門を抜けると、街全体が祝いの熱気に包まれていた。


「……まつりの日に、事件が起きないわけがない」


そんな皮肉まじりの呟きとともに、美琴は片町方面へと歩き出す。

太鼓の音、豪華な衣装の武者行列、舞う加賀鳶の旗。

歴史と華やかさの交差点に、不可解な“影”があった。



■Scene 2 —— 倒れた男と“百万石の書状”


午後2時、香林坊の交差点。

行列を眺めていた群衆の中で、突然一人の男が倒れた。


「——あの人、血を流してるっ!」


美琴が駆け寄ると、男は中年の和装姿。胸元には何かを掴んだまま意識を失っていた。

紙片には、筆文字でこう書かれていた。


「百万石の裏、正す者ここに眠る」


倒れた男の名は河島泰平かわしま・たいへい

地元の歴史研究家であり、百万石まつりの記録保存活動に従事していた人物だった。


美琴は警察より一歩先に、“事件”のにおいをかぎとっていた。



■Scene 3 —— 百万石の「裏」とは?


市役所の特設展示に、河島の手がけたパネルがあった。


「加賀藩前田家の初代・前田利家が入城したその日が、百万石まつりの由来。だが、その裏には……」


パネルにはそう記されていたが、肝心の“裏”の部分が、直前になって撤去されたという。


「削除を要請したのは、祭の実行委員会だったそうです」


現場で話を聞いたのは、テレビ金沢の若手記者・浜岡詩織はまおか・しおり

過去にテルメ金沢の事件でも関わった知己で、今回も美琴に協力を申し出てきた。


「詩織さん、“裏”って……?」


「河島さんは、百万石入城の史実には“もう一つの真実”があるって話してました。“利家が招かれたのではなく、策略で奪った”と」


「歴史の“英雄”に、別の顔があったとすれば……まつり自体が揺らぐ」


「だから消された。まさに“百万石の嘘”です」



その夜、美琴のスマートフォンに匿名のメッセージが届いた。


「真実に触れるな。でないと、次は——あなた」


メッセージには、利家の家紋が添えられていた。



■Scene 4 —— 消された記録、再浮上する過去


翌朝、美琴は河島の書斎を訪ねる許可を得て、膨大な資料の中から“ある一冊の古書”を見つけた。


それは、前田家家臣の密書の写し。

中にはこう記されていた。


「御屋形様は、越中の地より密かに武装し、金澤城へ入る。民は歓喜したように見せかけ、実は……」


後は破り取られていた。


「これが、本当に書かれていたなら……“歓喜の入城”は演出されたもの。河島さんはそれを公にしようとした……だから襲われた」



午後、美琴は河島が最後に会った人物——祭り実行委員長の娘で、金沢文化振興財団の職員・前田怜子に面会を申し込んだ。


彼女の顔に動揺が走った。


「父には、言えませんでした。彼は……家の名誉に囚われていて」


「けれど、あなたは河島さんと手を組んでいた。真実を記録しようとしていた」


「……はい。でも、彼が襲われるなんて思わなかった……!」



怜子の口から、ある人物の名が出た。


「ミス加賀友禅」の前任者——野島明美。彼女が“情報を漏らすな”と河島さんに忠告していたという。


美琴の目が鋭くなる。


「ミス加賀友禅……そういえば、数年前に不審な失踪未遂があった。あの事件……まだ、終わってなかったのね」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ