特別編「― 燃える記憶、告げられなかった名前 ―」
■Scene1:10年前の記録
「――これは、もうすぐ忘れ去られるはずの“未解決火災事件”でした」
片桐刑事が、分厚いファイルを美琴の前に差し出した。
表紙には、赤いスタンプで「事故」と記された古い火災記録。
だが、その中身は矛盾と不自然な空白だらけだった。
「正式な死者1名。“椿原初音”さん。だが、記録には“第一発見者”の名前が空欄になってる。通報者も未記録。そして……」
片桐はため息をついた。
「――この火災が、実は“消されかけていたこと”もな」
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■Scene2:証言と記憶の断片
「私、あの夜……確かに“誰かの声”を聞いたんです」
椿原瑠璃が静かに語る。
「母のものではない、もっと若い……女の人の声。“火をつけろ、証拠は焼ける”って……」
その瞬間、広瀬清美が顔を上げた。
「……同じセリフが、消防無線の音声記録にも、かすかに入っていました。だがノイズで解析できず、上層部の指示で破棄されたんです」
美琴は呟くように言った。
「それって……“事故”じゃない。最初から“誰かが計画していた放火”」
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■Scene3:姿を消した“親友”
片桐刑事が開いた古い旅館の宿帳。
「椿原初音さんが亡くなる3日前、ここに宿泊していた女性がいた。“志倉恵理子”。初音さんの旧姓“志倉”と一致する人物です」
「つまり、親族かもしれない……もしくは“名を偽っていた関係者”」
さらに調べると、志倉恵理子は元・某医療法人の職員。
火災前に“ある不正会計”を内部告発し、直後に失踪していたことが判明。
「つまり――初音さんは、その“志倉恵理子”に会い、何かを聞かされた。
それを告発しようとして……命を奪われた可能性が高い」
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■Scene4:日記に残された真実
美琴は、初音の遺品の中から発見された日記の一節を読み上げた。
「“真実は、夜の火に溶けて消える。けれど――私は伝える。あの人の代わりに”」
この「あの人」が、志倉恵理子であることは確実だった。
そして、志倉恵理子が生きていれば――この火災の真相も明るみに出ていたはずだった。
「…でも、彼女は今も見つかっていない。まるでこの世から、跡形もなく消えたように」
「それは“消された”ってことだ」
片桐刑事の一言に、室内の空気が凍る。
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■Scene5:過去と今が交錯する夜
「お母さんが最後に言っていた言葉、“灯りを消さないで”って……」
瑠璃が涙ながらに呟いた。
「それはきっと、“真実を誰かに引き継いでほしい”という願いだったのね」
「ええ。そして今、それを受け取ったのはあなたよ、瑠璃さん」
美琴はその手をしっかりと握る。
「私はこの旅館を守ると同時に、10年前に消されかけた真実を照らす灯になりたい。
きっと、母親として、女将として――それが“私の役目”だと思うから」
広瀬清美がそっと立ち上がり、言った。
「そのために、福井県警も非公式に協力します。彼女の無念を……一緒に晴らしましょう」
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■Scene6:朝日と、新章の幕開け
翌朝。
瑠璃は旅館の玄関で深々と頭を下げた。
「ありがとうございました。私も、母の死を“過去のもの”にしません」
そして、美琴もまた、新たな覚悟を胸に刻んだ。
「火事の夜が終わり、真実の夜明けが始まる。
そして――物語は次の章へ」
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