特別編 『湯けむりに戻る時間 ―仲居たちと福井の味』
■Scene1:静かに戻った女将、美琴の帰館
夕方。
東尋坊の事件から戻ったばかりの美琴は、
ほんのりと潮の香りを帯びた風を背に、「テルメ金沢」の玄関をくぐった。
ロビーから聞こえる声と笑い、夕刻の灯り――
そのすべてが「帰ってきた」という実感を与えてくれる。
「……ただいま」
⸻
■Scene2:休憩室にて、仲居たちの談笑と甘味
そのまま2階の休憩室へ。
美琴が扉を開けると、妹の美羽、仲居頭の佐藤菜摘、
そして若い仲居たちが、湯呑み片手に笑っていた。
「あっ、美琴さん戻ったんやね!」
「ちょうど今、福井のスイーツ食べとったとこやよ~」
美琴が送ったはずのスイーツ――
•永平寺だるまぷりん
•アトリエ菓修の焼き菓子とケーキ
•洋菓子店コロンバの有名ケーキ
「全部、美琴さんが送ってくれたやつやろ?どれも美味しかった〜!」
「え、美琴さん食べてないの?……うわ、ごめん、全部食べた…」
思わず美琴は苦笑する。
「いいの。送ったのはみんなに食べてもらいたかったから」
⸻
■Scene3:次の旅の話と、美羽との姉妹時間
そんな中、美羽がふと尋ねる。
「次はどこ行くん?」
「うーん、今のところはね……」
と、美琴は手を指で折りながら話し始めた。
•「小松市かな。4月頃なら芦城公園や木場潟公園の桜が綺麗なんだって」
•「5月は鯖江市の西山公園で『さばえつつじ祭り』……」
•「6月になったら富山県の太閤山ランドで“いっちゃんリレーマラソン”に参加しようかな」
「え、走るの!?マラソン?」
「うん、リレー形式だけど…ちょっと挑戦してみようかと」
「うわぁ、応援行こっかな(笑)」
「それとね――東尋坊や永平寺、水晶浜、越前大野城は、
もう一度ゆっくり“観光で”行きたいな」
「ラベンダービーチとか、ヒスイ海岸も……事件抜きで、ちゃんと」
⸻
■Scene4:思わぬ訪問者と、次なる始まり
談笑の中、休憩室の扉が「トン」と控えめにノックされる。
「失礼します……お邪魔していいですか?」
入ってきたのは、福井県警の中村巡査だった。
笑顔と、どこか照れくさそうな表情を浮かべている。
「実は……明日と明後日の2日間、こちらにお世話になることになりまして。
お仕事のご挨拶と……それから、ちょっとだけ“お願い”も」
その場に一瞬、空気が変わる。
「お願い、って?」と菜摘。
「……いえ、詳しくはまた明日。今日は、皆さんにご挨拶を」
美琴の中で、“何か”が静かに動き出す気配がした。
⸻
■Scene5:夜の廊下、再び灯る探偵の目
その夜。
美琴は帳場を抜け、廊下の窓から月を見上げた。
「あの巡査が来るってことは……
何か、また“始まる”ってことだよね」
ふと、胸ポケットにしまっていた手帳を取り出す。
「女将の仕事と、探偵の時間。
明日から、どっちも頑張ろうかな」
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。