第20話(最終話)「風の崖で、君を待つ ―東尋坊に立つふたり」
■Scene1:断崖の上、風に揺れる白いスカーフ
ある朝、美琴は、福井県・坂井市の名所「東尋坊」を訪れていた。
高さ25mの柱状節理が広がる断崖絶壁――
風が吹き抜けるその場所で、ひとりの若い女性が立ち尽くしていた。
「お願い……もう誰にも会わせる顔がないの」
手に握られた白いスカーフが、海風に踊る。
美琴が声をかけると、彼女は静かに振り向いた。
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■Scene2:過去から逃げた彼女の素性
女性の名は朝倉真依。
元教師で、1年前に起きた“ある生徒の転落事件”により責任を問われ、
退職を余儀なくされた人物だった。
「私は、その子を助けられなかった……それがずっと重くて……」
真依は手紙も遺書も用意していなかった。
彼女は“静かに消えたい”と思っていたのだ。
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■Scene3:彼女を捜していたもう一人の存在
その頃、美琴の携帯には一本の電話が入った。
電話の主は、石川県警の片桐刑事。
「美琴さん、例の女性……東尋坊に向かった形跡があります。
ご主人も今、現場へ急行中です」
数分後、現れたのは刑事の夫――高橋悠真。
「……真依先生ッ!」
悠真の叫びに、彼女が振り返る。
実は、真依はかつて悠真の妹の恩師だったのだ。
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■Scene4:真実と向き合う時
悠真の説得により、真依はようやく涙をこぼす。
「あの子は、最後まで“先生は味方だ”って言ってたんだぞ」
「お前が立ってる場所は、あの子が生きて見たがっていた景色だ」
美琴はそっと手を差し出す。
そして、風が静かに吹いた瞬間――
「生きてください。あなたの存在が、誰かの救いになることだってある」
真依はその手を、震えながらも強く握った。
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■Scene5:未来を見つめる目と、誓いのキス
数時間後、地元警察は彼女の保護を確認し、病院へと同行した。
美琴と悠真は東尋坊の崖に立ち、
荒れる海を見下ろしていた。
「風、強いね」
「でも不思議と、怖くない。君が隣にいるからかな」
「ねえ悠真……」
「ん?」
「この風の中でも、私たち……キスできる?」
「それはもう、“一番熱いやつ”をな」
そしてふたりは、断崖の風を受けながら――
深く、長く、熱いキスを交わした。
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■Scene6:旅館へ戻る、灯のともる場所へ
その夜、テルメ金沢に戻った美琴。
仮女将の美羽が笑顔で出迎え、仲居頭の佐藤菜摘も温かく声をかけた。
「おかえりなさいませ、女将」
「うん、ただいま……少しだけ、遠くまで行ってきたの」
灯のともる廊下を歩きながら、
美琴は改めて“この旅館が、自分の居場所であること”を噛みしめていた。
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