第18話「神域に響く足音 ―気比神宮と盗まれた遺産」
■Scene1:早朝の気比神宮、誰もいない境内にて
美琴は早朝、福井県・敦賀市の**気比神宮**を訪れていた。
「北陸道総鎮守」として名高い古社。
大鳥居の下をくぐった瞬間、空気が変わる――
そんな感覚に包まれながら、美琴は境内へと進む。
「どうしてこんなに静かなの……?」
その静寂を破ったのは、
社務所から響いた警報音――
駆けつけると、宝物殿のガラスが割られ、重要文化財の一部が盗まれていた。
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■Scene2:敦賀市内、続発する不可解な盗難
警察の調べによると、ここ数日で敦賀市内の古い蔵や寺院を狙った盗難が相次いでいた。
・老舗の昆布問屋に伝わる「古文書」が消失
・私設博物館から「江戸期の銅鏡」盗難
・そして気比神宮の「御神宝」盗難
「犯人は“文化的価値のあるもの”ばかりを狙ってる…」
「しかも侵入経路や時間が、どれも“予知”されてたように完璧」
美琴は、これは単なる窃盗ではなく、
“計画的なコレクター”による犯行ではないかと睨む。
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■Scene3:『不敬の呪い』という噂
地元の宮司によると、過去にも“神宝を勝手に触った者が不運に見舞われた”という言い伝えがあった。
「この神社には“見るべきでない宝”がある――
そう言われてきた品が、今回まさに盗まれたのです」
そして美琴は、盗まれた中にある“黒塗りの木箱”に目を止めた。
それは、朝廷からの伝来品とされながらも、長く秘匿されていた不開箱だった。
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■Scene4:夜の敦賀港で見つけた“闇の倉庫”
夜、美琴は地元の若手刑事からある噂を耳にする。
「敦賀港の旧倉庫街で、深夜に誰かが“美術品らしき箱”を運んでいたって…」
現場に向かうと、倉庫の一室に盗まれた神宝の一部と、数冊の古書が見つかった。
だが犯人の姿はなく、現場には**“不敬”と書かれた短冊**が落ちていた。
「……これは呪いじゃない。
“神を利用する者”への、警告よ」
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■Scene5:犯人は誰か ―熱を帯びる追跡劇
翌日、美琴は再び気比神宮を訪れる。
警察の調査によって、事件の背後には文化財転売を目的とした個人収集家グループの存在が明らかになる。
「彼らは“神の名”を盾にして宝を奪い、裏で売っていた」
そして、美琴のもとに――
匿名の封筒が届く。
『この事件の黒幕は、神社の外にはいない。
“信仰を装う者”に気をつけて』
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■Scene6:呪いの終焉と、寄り添う時間
事件は、神社関係者の一人が内通者であったことで決着を見る。
盗まれた品の大半は無事に回収され、
気比神宮の社殿には再び静寂が戻った。
夜、美琴は港町の宿に戻り、
ベランダで潮風を感じながら、夫・悠真の手を握る。
「私、やっぱり歴史と人の想いが交わる瞬間が、好きなんだと思う」
「じゃあ、その想いを俺が全部、毎晩キスで閉じ込めようか」
「……うん、お願い」
そう言って、二人は長く、深く、穏やかな夜のキスを交わした。