特別編 「湯の宿に灯る未来 ― 二人で迎える初夜」
■Scene01 静かな宿、2人だけの時間
結婚して半年。
事件に明け暮れる日々の合間、ようやく訪れた2人きりの時間。
「今日は、仕事も事件も全部忘れよう」
悠真の一言に、美琴は微笑んで頷いた。
旅館女将としての責任、刑事としての使命。
二人が肩に背負ってきたものは決して軽くなかった。だからこそ、この夜は特別だった。
湯の宿は能登の海沿いにある隠れ家のような旅館。
露天風呂付きの部屋に、静かな波音と檜の香りが漂う。
「……ありがとう、連れてきてくれて」
「こっちこそ。ずっとこういう日を待ってた」
二人で湯に浸かり、頬を寄せ合いながら見上げる夜空には、無数の星が瞬いていた。
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■Scene02 恋人でも、夫婦でもない“私たち”になる
湯から上がり、浴衣姿で縁側に座る美琴の横に、悠真が静かに座る。
「ねえ、子ども……欲しい?」
その言葉に、悠真は驚いたように目を見開き、すぐに優しく微笑んだ。
「もちろん。美琴の血が通った子を、抱いてみたいと思ってた」
「……うん。私も、同じ」
ふたりの間の沈黙は、言葉より深い信頼の証。
そして、悠真がそっと手を重ねる。
「じゃあ……今夜は、そういう夜にしようか」
美琴は少しだけ頷いてから、そっと彼の首に腕を回した。
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■Scene03 深く、熱く、そして優しく
部屋の灯りを落とす。
月明かりが障子を透かし、ふたりの影を映す。
悠真は、美琴の肩に手を添えて、ゆっくりと浴衣をほどいた。
その動作は乱暴ではなく、あくまで大切なものを扱うように、丁寧に。
「……綺麗だよ、美琴」
美琴もまた、彼の浴衣の帯を解いた。
唇と唇がふれ、浅く、そして深く重なる。
息を交わし、熱を確かめ合いながら、言葉の代わりに鼓動で想いを伝える。
「ずっと……こうしたかった」
「私も……いつか、あなたの子を産みたいって、思ってた」
互いの肌を感じながら、少しずつ布を脱ぎ捨て、心の奥にある“本当の自分”をさらけ出す。
愛しい人を抱く。
そして、それが「家族」になる一歩だと、2人とも知っていた。
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■Scene04 夜明けと未来
朝日が、障子の向こうから差し込んだ。
美琴は、悠真の腕の中で目を覚ます。
彼の胸の鼓動は静かで、でも確かに彼女の耳に届いていた。
「……おはよう、美琴」
「おはよう、悠真。……ねえ、昨日のこと、夢じゃないよね?」
「夢なら、毎晩見たい」
そう言って額にキスを落とす彼の目は、誰よりも誠実だった。
この旅館で、事件と人々に向き合いながら、家族をつくっていく。
それが、ふたりの“選んだ未来”。