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第15話「駅前に現れた影 ―名乗らぬ相談者と秘密の箱」


■Scene1:福井駅の朝、再び人混みの中へ


越前地方での数日を終えた美琴は、福井市へと戻ってきた。

宿は福井駅から歩いてすぐの「ホテルフジタ福井」。

その朝、ホテルのロビーで見知らぬ封筒が差し出される。


「白石様宛に、今朝のお届けものです」


封筒には手書きでこう書かれていた。


『美琴さんへ。午後2時、駅前の恐竜広場に来てください。

きっと、“あのとき”の真相を伝えたい人がいます』



■Scene2:名乗らぬ女と、ひとつの木箱


午後2時、約束の時間。

福井駅前のシンボル「恐竜広場」には、親子連れや観光客で賑わっていた。


そんな中、美琴の前に黒いコートを着た中年女性が現れる。


「あなたが、白石さんですね……。

私は、事故のことではありません。けれど――“近い場所”にいました」


彼女の手には小さな木箱。

中には――ある古びた手帳と切り取られた新聞記事の束。



■Scene3:福井文化会館の裏手で明かされた“鍵”


女性の名は吉永佐和子(55)。

10年前の事故現場から400mほど離れた場所に住んでいた、元新聞記者。


「あの事故、ただの不注意じゃない。

背後に“急停止を誘発させるトラブル”があったかもしれないの」


彼女が指さしたのは、福井文化会館の裏手にある旧道路整備資料庫。


「当時、県道31号線で“施工不良”が指摘されていたの。

けど事故の直後、それが記事ごと“消された”のよ」



■Scene4:もう一つの疑念、消えた記事


佐和子が持っていたのは、

事故の直前に書いた未掲載の原稿と、

彼女がクビ同然に退職した日付が記された内部メモだった。


「あの事故には、行政と業者の癒着があった。

井之上さんはスケープゴートだったんじゃないかって……

でも綾子さんに会うのが怖くて、何も言えなかった……」



■Scene5:記者の罪と、美琴の覚悟


「この箱の中身――あなたに託します」

佐和子はそう言い、駅の雑踏の中へと姿を消した。


ホテルに戻った美琴は、箱の中身を見つめながら、深く息を吐いた。


「10年前の事故は、まだ終わってなかった……

“あの人たち”が亡くなったのは――本当に、“ただの偶然”だったの?」



■Scene6:夜のベランダ、通話越しの優しい声


夜。

美琴は部屋のベランダから福井市の街並みを見下ろしながら、

旦那・高橋悠真と通話していた。


「ねえ悠真……私、まだ続けてもいいかな」

「ああ。君が決めたことなら、俺はどこまでも支えるよ」


そして――


「また戻ったら、キスしてね」

「もちろん。長くて、甘くて、深いやつを」


笑いながら、画面越しの顔にそっと唇を寄せた。


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