表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/106

第12話「静寂の寺に響いた声 ―永平寺と寂光苑の追憶」


■Scene1:美琴の贈り物


「すみません、これを**速達でテルメ金沢宛にお願いします」

美琴は、永平寺門前町の郵便局でいくつかの包みを丁寧に出した。


中には――

•永平寺だるまぷりん

•洋菓子店コロンバの有名ケーキ

•米粉100%のしっとり甘い米ロール

•アトリエ菓修の一番人気スイーツ


「これで少しでも、美羽たちに疲れが癒えたらいいな……」


旅館を思い浮かべながら、美琴はそっと笑った。



■Scene2:寂光苑の静けさと、永平寺の風


その足で美琴は、永平寺の境内を訪れた。

杉木立に包まれた道をゆっくりと歩く。


「この静けさ……空気がまるで、心を撫でてくるみたい」


続いて訪れたのは、その裏手にある寂光苑じゃっこうえん

樹々に囲まれ、まばらな観光客が行き交う中、

一人の女性の叫び声が、空気を裂いた。


「きゃあああっ――!! 誰かっ、ひったくり――!!」



■Scene3:集まる人々、駆ける足音


「今の声……!」


美琴が駆け寄ると、

若い女性が地面に膝をつき、バッグを奪われた直後だった。


通りすがりの観光客が数人、騒然と集まり始め、

現場にはすぐに規制線が引かれる。


およそ30分後――

制服姿の男女2人の警察官が現れる。


その顔に、美琴は見覚えがあった。



■Scene4:再会の巡査、中村の声


「女将さん……ですよね?」


目の前にいたのは、三方五湖で出会った福井県警の中村巡査だった。

驚きと笑顔が入り混じった顔で、そっと小声で話しかけてくる。


「……実は私の友人、富山で刑事をしてて。

五箇山の事件でご一緒したって聞きました。

それに……うちの親戚も富山県警で。女将さんの話、噂で聞いてます」


美琴は少し戸惑いながら微笑んだ。


「恐縮です。今日はただの観光客ですから……」


すると中村はそっと打ち明けた。


「実は今回、**福井県警本部長の意向で“外部協力は不可”**になっていて……。

でも夜、**ホテルで事件の概要だけでもお伝えしますね。怖いと思うので」



■Scene5:福井市・ホテルフジタにて


その夜、美琴が滞在していたのは、

「ホテルフジタ福井」――市内でも老舗の有名ホテル。


22時過ぎ、ロビーラウンジで中村巡査と合流。

中村はタブレットと報告書のコピーを手に、美琴へ説明した。

•犯人は県外から来た窃盗常習犯

•永平寺門前町の混雑を利用し、女性観光客のバッグを狙った

•周辺の防犯カメラと足取りから、福井駅前で身柄確保済み


美琴「迅速な対応、さすがです」

中村「いえ……正直、女将さんが居てくれたから、心強かったです」


彼女はふっと小声で呟いた。


「またいつか……違う形でも、“何か一緒にできたら”って、思ってます」



■Scene6:朝のメール、そして次の地へ


翌朝、チェックアウトの準備をしていた美琴のスマホに、

1通のメールが届いた。


「女将さん。本当にありがとうございました‼︎

またテルメ金沢に遊びに行きますね!」

―中村より


読みながら、美琴は笑った。


「“また来てください”って言いたいのは、私たちの方なのに」


そして――

次の目的地に向かう旅路へ、ゆっくりと足を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ