【劇場版】 『雪の夜、灯る影 ―テルメ金沢殺人事件簿 劇場版 -』
Prologue:吹雪の夜に、殺意は灯る
年末の金沢。
激しい寒波が市内を包み、列車や道路がすべて止まり、交通が麻痺する中――
「今夜はご宿泊のお客様と、スタッフの皆さんに限って、館内で待機をお願いしております」
美琴のアナウンスが響く中、テルメ金沢は“完全密室状態”となっていた。
外部との連絡も絶たれたその夜、白い着物を着た客のひとりが、ロビーで倒れていた。喉元には、刺し傷――。
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Scene1:12人の容疑者と、名簿にない宿泊者
被害者は東京から訪れていたIT企業社長・小野寺圭介(38)。
ただし、彼の名は宿泊名簿にはなかった。
「名簿にない宿泊客? それに、チェックイン時間もバラバラ……?」
警察も到着できない中、美琴と片桐刑事は、客とスタッフ計12人を“ロビーの間”に集める。
「今夜の宿泊者の中に、犯人がいます。
この場からは、誰も出られません」
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Scene2:白い着物の謎と、交換された鍵
美琴が気づいたのは、“白い着物”が館内の倉庫から1枚、消えていたこと。
そして、事件直前に「部屋の鍵が交換された」と訴える客が1人。
「まるで、最初から誰かを“入れ替え”る計画があったように…」
各人の証言が食い違い、アリバイは揺らぐ。
やがて照明が一時的に落ちた瞬間、2人目の犠牲者が現れる。
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Scene3:過去に繋がる復讐の動機
殺された小野寺が数年前に関わった“誤認逮捕事件”。
そこで失われた命と、ひとつの家族の崩壊。
生き残った少女――彼女の名前は、倉本すみれ。
「家族を壊された私が、今夜、裁くの」
誰もが知らぬ間にすれ違っていた過去の因縁。
復讐の舞台として選ばれたのが、この旅館だった。
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Scene4:灯りが導く、真実の声
最後に美琴が頼ったのは、旅館の中庭にある“灯籠の光”。
それはかつて、美琴の祖母が“嘘を照らす”と言っていたものだった。
「……この灯りは、心に影がある人の顔を、白く照らすのよ」
灯りのもと、すみれは自らの犯行を認める。
「……ありがとう。私を“止めて”くれて」
雪が止み、外に出た朝――
旅館には、静かな光が差し込んでいた。
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―劇場版 終幕―