第20話(最終話)「そして、新しい朝へ ―受け継がれる灯、歩き出す家族」
⸻
■Scene01 【春の旅館と卒園式】
春――
柔らかな陽光が差し込む朝、美琴は着物姿で鏡の前に立っていた。
今日は娘・茜の卒園式。
旅館も家族も、この数年で大きく変わった。
「ママ、見て! 今日のリボン、自分で結べたの」
「すごいじゃない。もうすっかり、お姉さんね」
悠真はスーツに着替えながら、静かに微笑む。
「……あっという間だったな。次はもう、小学生か」
⸻
■Scene02 【旅館という“家族”の場所】
午前中は卒園式、午後からは旅館の春の“開宴式”。
全国から来る常連客のために、新しい季節を告げる一日だ。
帳場では、双子の姉妹・美琴と美羽が並んで立ち、笑顔で客を迎えていた。
「ようこそお越しくださいました」
「おかえりなさいませ」
――“ただの旅館”だった場所が、“帰ってこられる場所”になっていた。
かつて自分が追われるように離れた実家が、
いまではたくさんの人の心を癒す“居場所”になっていた。
⸻
■Scene03 【灯される“志乃の灯”】
その夜――
旅館中庭に新たに設けられた**「志乃の灯」**に火が灯された。
亡き母・志乃の遺志を継ぎ、
「家族を、旅館を、想いを守っていく」ために。
スタッフ全員と家族、そして常連客がろうそくを掲げ、
静かにその灯を見つめる。
「私たちは、灯を消さない――
悲しみがあった場所にこそ、優しさを照らしたいから」
⸻
■Scene04 【それぞれの“これから”】
その後の時間は、ささやかな宴と歌で彩られた。
・美羽は、旅館の料理長と本格的に交際を始めたことを美琴に告げる。
・悠真は「富山の事件を機に、県警に“広域捜査課”を作りたい」と語る。
・茜は「将来、ママとパパみたいな旅館を作る」と無邪気に話す。
・そして、美琴は――
「私、しばらく探偵業からは離れて、この旅館を“私の人生”にしたい」
「うん……それが、きっと一番、志乃さんも喜ぶよ」
⸻
■Scene05 【夜明け前の夫婦】
その夜。
湯上がりの夫婦が、畳の部屋で湯呑みを挟んで向かい合う。
「……ありがとう、悠真。全部、あなたがいてくれたからだよ」
「俺の方こそ。美琴がいたから、警察官のままでいられた」
そしてふたりは自然と手を繋ぎ、目を閉じた。
――まだ暗い東の空に、かすかな光が差し始める。
⸻
■Scene06 【そして、新しい朝へ】
翌朝。
旅館の帳場に、美琴と美羽、茜と赤ん坊の笑顔が並んだ。
「おはようございます! 朝食は、金沢の春野菜と加賀味噌の味噌汁ですよ」
「“灯”は、絶やさず今日も燃えてます」
旅館の門には、新しく彫られた木札が掲げられていた。
『テルメ金沢 湯けむりと、家族の宿』
―受け継がれる灯、歩き出す場所へ―
これからも、事件は起こるだろう。
でも、ここには戻る場所がある。愛する家族がいる。
だから、何度でも――新しい朝へ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。