【プロローグ】
――ようこそ、金沢の奥座敷へ。
湯けむりの向こうに潜むのは、癒し? それとも殺意?
私は白石 美琴、東京の出版社で働く26歳の編集者。
ある日、偶然観ていた昔のサスペンスドラマ『テルメ金沢殺人事件 若女将の推理帳』。その旅館の名に、私はハッとした。
――テルメ金沢。それは、私の実家だった。
実はそのドラマ、25年前に放送されたもので、仲居役として後ろ姿で出演していたのは…私の祖母。そして、今は叔母が「大女将」を務めている老舗旅館だった。
そんなある朝、実家から一本の電話がかかってきた。
「大女将が危篤なの」
帰省した私は、祖母からこう頼まれた。
『この旅館を…継いでくれないか?』
迷いながらも、私は出版社に退職届を提出。条件付きで会社も了承してくれた。――「たまに泊まらせてくれたらいいよ」って。
そして4年後、私は30歳で女将に就任。
そのとき思い切って、中学時代に好きだった先輩に告白したら…なんとOK!
先輩は25歳、すでに石川県警捜査一課の若手刑事。しかも、彼の相棒は私の祖母の幼なじみにして、彼の従兄弟というベテラン刑事。
こうして私は、金沢の旅館「テルメ金沢」で女将として、そして刑事の妻として、観光客と謎の入り混じる日々を送ることに。
事件の舞台は、テルメ金沢を中心に――
•ひがし茶屋街・主計町茶屋街
•金沢城・兼六園・尾山神社・21世紀美術館
•近江町市場・長町武家屋敷跡・石川県立美術館・妙立寺
•卯辰山花菖蒲園・玉泉院丸庭園・金沢駅・鼓門
•加賀友禅の工房見学、加賀市・小松市・千里浜なぎさドライブウェイ
•輪島の朝市、能登半島、七尾町、県民海浜公園…
•さらに東尋坊や三方五湖、富山の黒部ダムや立山連峰も事件の舞台に!
そして時に、韓国から噂の名探偵――あの「キムチ探偵★朴凛奈」も登場し、事件は国境を超えて繋がっていく。