僕たちの覚悟
スーッピーッと穏やかな寝息を立てるイェンとそこに並んでベッドの枕部分に腰かけているジョニーを囲んで僕たちは椅子に座ってちょっとしたティータイムをしゃれこんでいる。
「ところであんたたちはこれからどうするんだ?」
ジョニーが僕を見て問いかけた。あんたたちと言っておきながら僕に問いかけている。
「んーそんなの分かんないけれど、このままってわけにはいかないよね?」
僕はオリーブ、ナイナ、マイクを見渡した。
「そうですね。きっと私たちもギルダーとして外で活動するんでしょうね」
意外にもマイクがすぐに答えた。
彼は迷ってはいないようだ。
対照的にオリーブとナイナの表情は少し暗い。
「・・・他の道はないのでしょうか?戦うという道ではなく生きる続けるための道が」
「そうよね…何もギルド職員はギルダーだけが仕事ではないもの。リフティーのような事務職だってあるし、それが無理なら売り子だってある訳だし…」
「嬢ちゃんたちには悪りーいが、そいつは少し難しいかも知れないな…」
ジョニーは頭を軽く掴んだり話したりしながら申し訳なさそうにしている。
「ギルダーってのは確かに一番危険だ。そのせいで常に人で不足だ。それに比べて別の仕事ってのはもうある程度は人が揃っている。前は選べたって話なんだが、もうその余裕もないらしい。最近じゃここで生まれたガキたちもギルダーになり始めているらしい。前はこの街のことをよく知る人が街に、それ以外が外にってのがこの街の風潮だったんだけどよ。」
オリーブとナイナは悲しそうな表情を浮かべながらもしっかりとジョニーの話を聞いていた。強い子たちだ。二人とも。
「まー何か画期的なアイデアや上手い儲け話になるネタがあるってんならいけるかも知んないけどさ…自信あるかい?」
そこまで言うとジョニーは話を終えた。
あるはずがない。ないとは言い切れないはずなんだけれど、僕たちはこの世界を知らなすぎる。もし商売や仕事の心得があってもそれが通用するかどうかの目算ができないのだから。
先が見えない。見えなければ死ぬかもしれない道しかない。
空気が重い。そりゃそうだ。
でもなんだか嫌だな。
ちょっとしかこのメンツで顔を合わせてはいないけれど、この子達が苦しそうにしているのを見るのは嫌だ。
「やるっきゃない。」
僕ははっきりした言葉でみんなに言った。
正直唇が震えてるのか、なんか声も震えていた。
あ…僕も怖いのか。
それが分かったからか逆に笑えてきた。
「僕が何とかする…お前に何ができんだよって言われたらそれまでだけど、ちとりあえず頑張ってみる。」
僕は不安そうにしている二人ともうすでに頷いてくれているマイクの眼を見てはっきりと言った。
「だからみんなで生き残ってやろうよ。」
今なら娘さんを僕にくださいだって言えるなって関係ないことまで考えていた。結構興奮している僕。もう今鼻息荒いかもしれない。
「あんまり無理しないでください。」
「私も頑張ってみますから一人で抱え込んじゃダメですよ」
不安そうにしていた二人がなぜかもうすでに明るい。
あれこれ前にも…
あんまり表情ださないマイクも広角が上がっている。
ジョニーなんて温かい目でこちらをみていた。
っておい。僕は真剣に話しているんだよ君たち…。