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僕たちの出会い~イェン~

もう私もここまでネ…


お腹すいたアル、ひもじいアル…


私がここにきてからずいぶんの時が流れた。


最初は集落が同じの顔なじみいつもの5人組で山菜を取りに山に入ったところ迷ってしまった。


だんだんと知らない草花や動物を前にして戸惑ったことを今でも覚えている。


帰り道も分からない。まるで知らない場所に着ているみたいだ。


三日三晩ひたすらに歩き、とうとう帰ることを諦めてしまった私たちは小さな池のようなところで木の根をかじりながら身を寄せて過ごすことにした。


食生活は前と少しも変わらない。


大きな木の裂けめを見つけて、あとは枝と葉っぱを組んで雨風を過ごした。


住む生活もほとんど前と少しも変わらない。


つまり普通に生活できたのである。


そんな生活をしていたある時、おてんとさんとおつきさんの色の話題になった。


私にはふつうの今までと変わらない色だと思うのだが、友人が赤いといった。


「お前は目が悪いアルネー」


それから少し経って、そいつはあたたかくて、赤色のものを指先からボッと出せるようになっていた。


触ってみたらやけどした。


それは火の玉だった。


そいつのおかげで生活はぐっと楽になり、水と土を混ぜて焼いて器を作った。


その器を直接温めた汁物ときたら旨いのなんの。


ありがたいネー


え?飲み水はちゃんとシャフツショウドクしたかって?


アナタえらい難しい言葉使うネー私たちの時代水なんてわざわざ煮ないアル


そんなこんなでだいたいの季節を乗り越えようとしていた矢先やつらに突然襲われたのだ。


緑色でいかつい目つきをした人というにはあまりにも醜い。


仲間の一人が見つけて私たちに知らせに来た時にすぐに襲われてしまった。


後ろからついてきたのだろう。


鼻がいいのか耳がいいのか。


私たちはすぐさま伍の陣形を取った。


何度か戦に駆り出されたことがある私たちが最初に教えられることだ。


戦で戦果を挙げたことはないが構えることだけは何度もやった。


構えられたことで少しはおびえてくれたのだろう。


ギギギと声を出しながらむこうさんも構えてきた。


それにしてもおぞましい。


同じ人だとは思えない。


肌の色どころか目の数もバラバラ、それでいて鋭く赤い眼、くちもとはよだれだらだらで下の息子さんなんて隠す気などさらさらない。


人の事は言えないが品性のかけらもない。


「まだおさるさんの仲間と言われた方が納得アルネ」


数は同じ5人、背丈も同じくらい、


ただ気になるのは向こうさんが持っている武器がいやに立派だった。


シュンッ


仲間の一人が膝をつく。


肩に矢が刺さっていた。


向こうは5人ではなかったらしい。


「ツッニゲルヨ」


打たれた友が勢いよく叫んだ。


私たちは撤退した。


撤退というより逃げ出した。


殺される。


死にたくない。


私ももちろん走った。


怖くて怖くてたまらない。


漏らしそうになりながら、いや漏らしながらただ一直線に走った。


「ぎゃーーーーー」


「やめてけろーー」


悲痛な言葉がこだまする森でひたすらに走る。


もう走れない…


息が切れて心臓が壊れそうだ。


ふと木の隙間に目が止まり後ろを見ながらその穴に滑り込んだ。


荒れた呼吸をできるだけ落ち着かせようとしたが意識すればするほど呼吸が速くなる。


心臓の音がどんどん大きくなっている。


このままではこの音で気付かれるかもしれない。


1分、2分、何分たったか、


永遠にも感じる時間ずっと息をひそめることに努めた。近くでカサカサと音がする。


(絶対ばれてる。もう終わりアル・・・)


シュッ、ドスッ


「ギャーーー」


どこから声を出しているのか分からない声が響いた。


仲間の声ではないようだ。


「ギャ」「ギャギャギャ」


数体の同じような声が集まってきた。


「fuck you!」


ドスンとも、バシュンとも聞こえる音と地面からの振動が伝わってきた。


「ヒャッハー」


一人だけではない何人かの声とともに先ほどまで聞こえていた汚い声はなくなっていた。


「We've taken care of everything around here, haven't we?」「you're right.」


何と言っているのかわからないが人の声ではありそうだ。


私は恐る恐る顔を出して声をかけてみた。


「我能和你談談嗎?」


話しかけてもいいかな?


私は4人のいかついお兄ちゃんたちに声をかけた。


髪が金だったり、銀だったり、異国の人たち。


正直地元の悪ガキどもの方がまだかわいいくらいに感じた。


「Are you a survivor?」


なんと言っているのか分からない。


ただ武器を向けてきていないので殺されることはないだろう。


それに私は最初から降参の意味を込めて両手をあげている。


「Grandpa, follow me.」


顎でこちらにこいと合図されながら私は歩いた。


半日もしないで大きな街が見えた。


私たちでは見つけられなかったのにこんな大きな街があるとは…。


立派な壁に囲まれた街に入り、手招きされながら大きな建物に入った。


「あなたの言葉も話せますよ。安心してください。」


受付の人が使う知っている言葉に涙をこぼした。


友と別れてからまだ半日だというのになんと心細かったことか…。


「あぁ…ありがとう。お嬢さん…」


かすれた声でお礼を言って、言われるがままに書類にサインをした。


「ではギルダーとして登録を完了しました。準備金として3ゴールドと装備や防具はギルドにあるのものももらっていいですよ。ただすべてボロボロですが…」


紹介された部屋には様々な装備が置かれていた。


私が所属する国では偉い方だと漢服に胸当てや肩当てなどをするのが大体だったがこれら全身を包む金属はなんなのだろうか。


幸い服も防具として残っているものであればもらえるとのことだった。


立派な漢服だ…いままで触ったことすらない深い緑色の生地。


これで龍などの刺繍が入ったら関羽様のようだ。


私はホクホクしながら防具を物色した。


武器は正直すべてボロボロで無いよりましという具合だった。


長物は…重くてとても触れそうにない。見たことない形の剣にした。


「それではご活躍を期待しております。最初は慣れないと思いますのでチームを組んで活動することをおすすめします」


優しい笑顔で傷ついた心も少しは和らいだ。


頑張っていこう。友の分まで。


・・・そう思っていた時期が私にもありました泣


誰もチームに入れてくれない。


チームを組もうにも同じように一人の人がいない。


言葉もほとんど分からない。


正直周りの人たちの立ち振る舞いから身分の違いを感じた。


「ここにいる人たちはみな王家の血筋なのか…」


イェンは知らなかった。


彼は凄く前の時代から来た珍しい部類で、彼の時代識字率などというものはない。


ほとんどが文字の読み書きができなかった。


拙い言語だけで生活していた彼。


そして体をはった仕事のギルダーをするには彼はあまりに小さく痩せすぎだったのだ。


一緒に活動してもお荷物になることが目に見えて分かっていた。


だから彼に近寄るものはいなかったのである。


彼を連れてきたパーティーもギルドの決まりで来訪者の生存者はできる限り街に連れてくることを遵守したまでだった。


独りぼっちで街をうろつく日々が過ぎ、彼はついにおじさん狩りにあったのだった。

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