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僕たちの街~アースト~

寝ているジェニーの耳に涙が何度も通っている。


どこか痛むのかと思い様子をみていると仲間の名前を呼んでいる。


「行くなっ…俺を一人にしないでくれ…」


彼は今仲間たちと会っているのかもしれない。


彼を看病中にリフティに聞いた話だが、正直彼の仲間が生存している確率は高くないらしい。


彼の仲間が戦闘している場所はそこまで遠くも近くもない人が駆けつけて1、2時間の間であろう距離。


しかし彼が街の近くまでに何度かの戦闘をし負傷した体を引きずってこの町近くまできた。


その時点で数時間は経過していると見られる。


巡回中の自警団が発見した時には気を失っていた。


ギルド舎に連れてこられて一度目を覚ました時が23時頃。


彼らは日が暗くなる前に街に戻ろうとしたところゴブリンの部隊を発見したというので4~5時頃と推測。


もう彼らが足止めとして戦闘を始めてから6時間が経過している計算になる。


彼らパーティーの全員が元軍人。


フィジカルも戦術も一級でギルドでも一目置かれていた。


しかし、魔法を使える者がいない。


この世界では火薬や石油などが存在しない。


いやあるのかも知れないが採掘などには至っていないらしい。


そのせいで火器類は出回っていなかった。


多勢に無勢では彼らでも厳しいというのがギルドの見解だった。


そんな話を聞いていた僕はジョニーが仲間の死を理解していることに感づいてしまったのだ。


一人でいる時間が必要だ。


僕はごはんをつくるため、部屋を後にすることにした。


「何がいいだろうねリフティー」


ジャパニーズ的には病み上がりにはおかゆ一択なのだが国際的に受けるものなのだろうか。


そこが問題だった。


「そうですねー出身によって違いはありますが、大抵は穀物をお湯でとくことが多いですよ。

なのでおかゆでも大丈夫かと思います。

彼に合わせるのでしたらトウモロコシの粉を溶かしたグリッツがよろしいかと。」


グリッツ?


食べたことないなー下手に合わせても味に自信がないんだよなー。


よしここは・・・


「シチューにパンを浸して食べて貰おう!」


外人さんはパンがいいでしょ。


完全なる偏見である。


「そうですか。それで充分かと思います。

ただ、ミルクといくつか材料がありません。

保存がきくものでしたらギルドにも備えがあるのですが…」


そうなんだ。なら!


「買ってくるよ。どこで買えばいいのかな」


土地勘がないのにお使いにいこうという無謀さ。


しかし私用で職員の人たちのお手を煩わせるわけにはいかないと思った。


「それでしたら・・・」


地図と必要なものをリストアップした紙、それから手提げバッグを渡された。



「ここがギルドですので、この市場に行けば大抵はそろうかと思います。」


大通りを2つほど曲がればすぐだった。これは大丈夫そうだ。


続けてリフティは一枚の木札を渡してきた。


「このカードを提示してギルドの掛け売りでといえば大丈夫です。必ず伝票をもらってきてくださいね」


なるほどシステマチック。


きっと月ごとにまとめて支払うのだろう。


「ありがとう。あと果物もいくつか買ってきてもいいかな。

果糖は栄養補給にもってこいなんだよね。」


OKサインをもらったので僕は憂いなくギルドを後にした。


まばゆい光が差し込んでいた。


僕たちが来た時には夜ではっきりと見えなかったが、早朝この町は美しかった。

家々はヨーロッパ風だろうか。


記憶のようには狭い家ではないがひっきりなしに並んで建物が建っていた。


僕の後ろ手にあるギルドは広々とした敷地で、独立して立っていた。


もしかしたら公共の施設などは分かりやすいように分けて立てているのかもしれない。


太陽は・・・


太陽かあれ?


月の時と同じで色が虹色に見える。


ただあまりにもまぶしいので直視はできないのだがそんな感じだ。


建物も道路もよく整備とはいかないまでも人の手が入っていて綺麗だった。


あと個人的には奇抜な色がなくおしゃれだ。


知らない街並みに心躍らせながら僕は目的地があるだろう方向へ足を進めた。


15分ほどで市場はあった。


露店が並んだ公園のようなところ。


日本ではあまり見かけない露店が並ぶ景色に僕はさっきから心が躍りっぱなしだった。


早朝ということもあってまだ人だかりがある訳ではなかった。


しかし各露店の人は手慣れた手つきで商品を並べている。


もう準備を終えて談笑している方もチラホラいるほどだ。


きょろきょろしながら目当てのものを探す。


日用品に雑貨、服に防具や武器様々なものがそれぞれ屋台ごとに売られていた。


「あんちゃん見ない顔だね?新入りかい?」


沢山の人に同じように声を掛けられた。


「そんなもんです。昨晩からこちらに。今はギルドの買い物でミルクと果物を探してて・・・」


「んじゃーウージさんのところとフルトさんのところだね。このまま先を進んだらお目当てのものが買えるよ」


みんな親切に教えてくれる。


少し歩くとミルクの絵が描かれた看板をぶら下げている屋台を見つけた。


どうやらウージさんのところらしい。


ミルクを買って驚いたのはちゃんとこの世界、冷蔵庫がある。


聞くと電気もあるのだとか。


ただ風力、地熱などの自然エネルギーに限るらしい。


そしてこういった屋台などの持ち運びには魔晶石を使った技術で冷蔵を可能にしているのだとか。


おー異世界、アンビリバブル。


ウージさんは街はずれで乳牛を営んでいるらしい。


牛もいるのか。


人と同じように流れてくるのだとか。


それもそうか。人だけじゃないか。


ただこの世界にはいろんな人種がいるのでいろんな生き物がいて、牛に似たような動物もこの街以外にはいるらしい。


あといつの間にか混ざって違う種になるやつもいるとか。頭が二つある牛とか・・・ちょっと怖い。


びっくり話を聞きながら買い出しを終え戻ろうとした時、僕は倒れている人影を見つけた。



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