表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

僕たちの戦い

僕は左手の拳を眺めている。


強く握ってみた。


今度は開いて。


何度かグッ・パーを繰り返した。


手首のブレスレットとミサンガに視線を落とす。


「オリーブ…」

「ナイナ…」


「イェン…マイク…ジョニー…」


僕は今身に着けている漢服、十字架のネックレス、腰巻に手を這わせ、仲間のことを思い出していた。


仲間だった・・・


彼らのことを・・・


彼らの顔も声も昨日のように思いだせる。


けれどずいぶんと前の記憶のようにも感じる。


・・・そんな淡い思い出。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「ダイスケ!イェンのフォローお願い!」


後ろからナイナの声が聞こえた。


横に視線を送るとイェンの薙刀は周りの木々が邪魔でうまく戦えていない。


「だから長いの辞めたらいいのにって…」


僕は目の前にいる緑の肌をした人間の子供くらいの大きさの奴に金的をかました。


大きさは子供。


でも顔と性格はかわいげのかの字もない。


ゴブリンと呼ばれる悪鬼。


痛みでもがいているこいつはもう戦えなそうだ。


イェンのサポートに回れることを確信し、彼の元に向かった。


「イェン!だから短いのにしろって言ったんだよ!」


汗だくのイェンに声を発しながら、イェンと対峙しているゴブリンを後ろから殴りつけた。


「アイヤー、これアタシのポリシーネ」


死ぬ思いをしてまでこだわりを捨てない男。


この男の名前はイェン。パーティーメンバーだ。


年齢は同い年くらい。


「そんなこと言ったってさ…」


戦いの最中なので物言いが強くなってしまう。


けれど荒立たないように精一杯抑えて言葉にしているところ


「ホラ他の人助けるヨ!」


彼は怒られる前に話を流した。


確かにそれは後だ。


切り替えて左右に目を配った。


左にマイクがゴブリンのこん棒を盾で抑えている。


右からは僕が先ほど居た場所に新しいゴブリンが駆けつけている。


パーティー後方に控えているオリーブとナイナを狙っているようだ。


走ってくるゴブリンの後ろにもゴブリンが…

ただしこいつは今転倒した。


ジョニーが足止めとして転ばせたらしい。


「イェン、右から来る。ついてきて!」


先頭のゴブリンにはイェンは間に合わないかもしれない。


僕は先頭のゴブリンに横から突っ込みながら、

イェンに「その薙刀ジョニーのように突いて!」と叫んだ。


斥候のジョニーはボウガンに銃剣のような短剣バヨネットで突きをやる。


きっとイェンも見ているから分かるだろう。


多分…きっと。


僕は叫びながら頭突きで横からタックルをかました。


何とか横転させ彼女らが危ない思いをすることはないだろう


神官のオリーブと魔法を使うナイナは大事な後衛。


戦闘では指示とみんなのサポートをお願いしていた。


人間で魔法を行使できるのは多くない。


彼女らは僕たちにとっても、人間族にとっても貴重な存在なのだ。


「万が一彼女らに何かあったら分かっておるな」


ギルド職員や神官連中の多くの方々に言われている。


もし彼女たちを置いて帰ったのなら僕たちは街にいられないかも知れない


と余計なことをぐるぐる考えながら目の前のゴブリンと対峙する。


タックルの勢いが強すぎて何回か横転して見事着地してしまった。


受け身や側転などの技術は彼らにはないが奇跡的にいい態勢を取られてしまった。


視線が交差する。


いつ見ても気持ち悪い顔と眼ん玉だ。


自分も人のことは言えないがそういう問題じゃない。


対峙している奴は目も鼻も口の数も一緒のタイプ。


ただこいつらは数も多いのか個性が強い


中には体のパーツが一つや二つ多いのもしょっちゅうだ。


何より体も息も血なまぐさい。


目つきはおぞましい。


「ギィ、ギャャャー、ギャャャ!!!」


彼らなりの威嚇なのだろう。


唾をまき散らしながらこちらに叫んでいる。


正直言ってビビっていないといえば嘘になる。


こいつらは殺しに来ている。


凶悪犯と対峙しているのだ。


寒気と身震いする。


けど気持ちで負けたら終わりだ。


「オラーーーーーー」


精一杯の声で応戦した。


やられる前にやってやる。


声にあてられたゴブリンが右手を振りかざしながら飛び込んできた。


左で防ぐ。


真面に受けると痛いので、少し前に出て棍棒が振り切られる前に手で払いのけた。


体流れた、


ここ!


払いのけた時には作っておいた右拳のまっすぐストレート。


「シュ」

「ゴズン」


ゴブリンは流れた態勢を戻そうと左に体を戻そうとしていた。


そこに綺麗に入ったのだ。


流石に立てまい。


鼻か顎の骨をいただいた感触があった。


倒れたゴブリンの先でジョニーとゴブリンがやりあっている。


そこへイェンが参戦。


まさに横やり。


左わき腹を突いた。


刃が沿っているのが幸い突くこともできたようである。


狼狽えた隙にジョニーは首と胸を刺した。


左のマイクも棍棒を防いで、続けてゴブリンの鼻目掛けてシールドバッシュ。


鼻血を出して仰け反ったところに右手の剣を振りかざした。


近くに立っているゴブリンはいない。


僕たちは生き残った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ