第98話 新生活開始
色々な手続きが終わり。
俺は吉常天麻から、頼朋天麻になった。
よってとうとう。
俺は自分の家に入居する日がやってきたんだ。
父さんに選んで貰った候補の中から、俺が選んだワンルームマンションに。
「コーポ乾……666号室」
コーポ乾は7階建てのワンルームマンションで。
部屋番の百の位は階数。
そして建物の構造上、階段が7つついていて、部屋番の十の位はその階段の番号を指すらしい。
つまり俺の部屋は6階で。
6番階段を上がった先にあり。
その中の6番目の部屋ということだ。
……なるほど。
階段を登って自分の部屋に辿り着くまでの間、俺はそう、部屋番の意味を噛み締めていた。
これから俺の城になる部屋の番号だからね。
クリーム色で塗装されたコンクリの階段や廊下を進んでいき。
俺はついに、これからの自分の家に辿り着く。
……ここか。
黒い金属扉が立派だった。
頑丈で重そうだ。
そして渡されたこの部屋の鍵を見る。
鍵の部分がギザギザじゃなくてボコボコ。
……ディンプルキー。
これまでの、ギザギザキーじゃない。
専門業者でないと合い鍵が作れないという、防犯性が高い鍵だ。
……嬉しい。
なんというか
富裕層になった気分だった。
部屋に入る。
玄関の部分、上り框が低い。
この辺は今まで住んでた安アパートとあまり変わらんな。
下駄箱が無いので、買うかどうか検討……
雨の日は長靴欲しいよな……。
長靴っていくらくらいだっけ……?
部屋の広さは今までの俺の部屋の倍以上の広さがあった。
ワンルームだけど、狭いとは全く思わない。
部屋にはすでに、パイプベッドと四角い木製ローテーブルが運び込まれてあった。
父さんからのプレゼントだろうか……?
テレビやパソコンは無い。
でもま、それはおいおいで。
それにパソコンはスマホあるから絶対に欲しいってわけでも無いし。
むしろ、無い方が良いかもしれない。
勉強や鍛錬の邪魔になりそうな気がするし。
そして床はカーペット仕様。
飲み物や汁物をこぼすと大変だ。
……ここが。
俺の部屋……
というか、家、か……
感慨深いものがあり、大きく息を吐く。
テレビやパソコンだけじゃなく、他にも色々足りないが。
それはこれから買い足していこう……
そして午前中に持ち込んだ俺の荷物を整理して。
近場のホームセンターで買って来たカラーボックスを組み立て。
それを使って教科書やノート類を整理し終えた頃。
インターホンが鳴った。
俺はそれを確認した。
モニターで、マンション入り口のカメラから訪問者の姿を見れるので。
モニターを見ると、少し大人っぽい印象の灰色のハーフコート衣装に身を包んだ
小柄な眼鏡の女の子……
俺の彼女である霧生が、少し落ち着かなさげにカメラの前に立っていた。
……約束してたんだよな。
俺が自分の部屋に移り住む日に、お祝いしてくれるって。