第92話 告白
「えっ、そういう冗談ってセクハラになるんじゃないの?」
あまりにもいきなりだったから、俺は真顔でそう返した。
すると佐藤は少し怒ったような様子で
「……冗談じゃ無いよ。本気だよ」
そう言って来た。
周囲には聞こえない様に声量は抑えていたけど。
その目は……
確かに本気に見えた。
彼女は言う
「吉常くん、カッコいいと思うし、クラス保持者でしょ? ……並みの男の子より絶対に強いから、いざというときにまず確実に守って貰えるじゃん。そんなの、行くしかないでしょ」
そう言って微笑む佐藤。
そういうもんなの……?
でもさ
「俺、佐藤のこと全然知らないぞ?」
「これから知れば良いでしょ」
俺の言葉に、食い気味で被せて来る佐藤。
……それぐらい本気ってことなのか……
でもな……
何だか俺は「分かった。付き合おう」とは言えなかった。
それが何でなのか……
結局、佐藤の告白については「俺の中ではそんなに急に決められない。ちょっと待って」と言って保留した。
明日絶対に返事すると約束して。
佐藤……
確かフルネームは佐藤しずか、だったっけ?
クラスの男子で「顔つきがエロい。きっとエッチが上手いに決まってる」なんて決めつけてこっそり盛り上がってる奴がいた。
まぁそいつはアホ野郎なんだけどさ……
どうなのかな?
嫌な女では多分無いんだろうとは思うんだが。
そういう女だったら、多分話題には上がらないと思うんだ。
あくまで多分だけどな。
いくらエロくても、嫌な人間を讃えるようなことを言うのは嫌だろ。
だから多分、嫌な女では無いんだろ。多分な。
知らんけど。
俺は悩みながら、トイレに入る。
用を足して手を洗う。
そして洗面台の前でハンカチで手を拭いていると
……トイレの外での会話が聞こえて来た。
男子数人の会話だ。
今の俺は耳が良いから、こそこそ話している他人の会話も耳に入って来るんだ。
それはこんな内容だった。
「しかし、アイツの告白、成功するのかね?」
「どうだろ……?」
「俺はなかなか厳しいと思うんだよね」
誰か告白するのか。
俺には特に関係ない話だ。
俺は聞き流していた。
……次の言葉を聞くまでは
「でも吉常と別に付き合ってるわけじゃないんだし、フリーってことだろ?」
俺の名前。
それを認識したとき、俺のハンカチで手を拭く手が止まった。
えっ
その言葉で俺の脳裏に過る姿。
俺と付き合っていると、良く誤解されている女子……
それは……
「まあ、放課後に訊いてみようぜ。告白がどうなったのか……霧生相手に」
……何だって?
霧生が……?




