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第88話 エックスデーは突然に

 その日は俺に事前連絡なしでいきなり来た。


「……何よこれ?」


 いきなりその日。

 俺の家の安アパートに、弁護士事務所からの内容証明郵便ってヤツが来たんだ。


 牝豚はその内容を読んで発狂していた。


「ふざけんなATMの分際でッ! 何が弁護士だッ! 今更ッ!」


 ……ウッザ。

 吐き気がする。


 喚き散らして、床を踏み鳴らすカスの姿に。

 俺はこいつから生まれたのかと死にたくなる。


 多分弁護士先生から「養育費の使い込みを指摘する内容の文書」を送られたんだろ。

 そして多分、使い込んだ養育費を返還しない場合は親権を放棄するように、っていうようなことが書かれてたんじゃ無いだろうか。


 牝豚は内容証明の郵便を即座に破り捨てたので、詳しい内容は分からなかったけど。



 で、そこから数日後。


 また内容証明郵便が届いた。


 それを読んで牝豚は青くなる。


 ……多分、脅しじゃないぞっていうようなことが書かれていたのか。


 そしてその次の土曜日だ。

 俺は牝豚と一緒に、近所のファミレスに呼び出された。


 そこには父さんと、会ったことのない30代くらいの男性が待っていて。

 名刺を出して来た。


「弁護士の黒岡修吾と申します。本日はよろしくお願いします」


 それは紺色の立派なスーツで身を包んだ、がっしりした男性で。

 髭は綺麗に剃ってて、髪も綺麗に整えている。

 彫りが深い、男らしい顔立ちの人だった。




 そこからの話し合いは一方的だった。


 俺の親権は渡さないと大きな声で主張する牝豚に。

 弁護士先生が


「お母さん。あなたが養育費を使い込んでいることは、こちらで調べ上げた結果で明らかなんですよ」


 言って、たくさんの書類や写真を出して示して来た。

 ……探偵でも雇ったんだろうな。


 俺のタレコミを元に、そこから法的に有効なレベルにまで証拠能力を高めるため、みたいな感じで。


「これは自分へのご褒美で……それにプライバシーの侵害じゃ……」


「あなたは法的なプライバシーの侵害の定義ご存じですか? これは全て適法な手段で取得した情報です。全く問題ありません。あと、ご褒美だとかそういうのはご自分の稼ぎの範囲内でやって下さい」


 あなたがお金を使った相手からの証言は集めてますし、交友関係を示す写真その他も揃えてます。

 言い逃れは無駄です。


 ご決断を。


 青くなって、半泣きになっている牝豚に弁護士先生はにこやかに告げた。


 ……ざまあみろ。ゴキブリ。


 すると牝豚は


「……天麻。アンタ、お母さんと一緒に居たいわよね……?」


 最後に。

 俺に縋るようにそんなことをほざいて来たので。


「いや全然?」


 そう返してやった。

 そのときの牝豚の顔ったらなかったな。


 絶望。


 それ一色だったよ。


 だから俺は


「来る日も来る日も、父さんの悪口を聞かされるのは最高に嫌だったよ」


 これまでに受けた仕打ちを口にする。


「毎朝の食事に、焼いてないパン1枚とちぎっただけの野菜、茹でただけの卵を出されるのは惨めだった」


 この生き物と決別するために。


「そしてアンタの機嫌が悪いときは、それすら出ないのも最低だった」


 あと、ガキの時分はよく殴ってくれたよな。

 そのときの恨みは忘れてないぜ?


 ……コイツに対する憎悪の言葉ならいくらでも出る。


 俺の恨みの言葉にブルブル震えるカス。


「そんなことくらいで……あなたはお母さんが可哀想だとは思わないの?」


「思わないね。とっとと俺の前から消えて、どこかでひっそりくたばれ」


 とっとと親権放棄証明書かなんか、そういう書類にサインして消えろクズ。

 そう吐き捨てるように言った。


 弁護士先生はそんな俺を嗜めないで、ニコニコと笑みを浮かべて見ていた。


 ただ、父さんが


「天麻くん。それ以上はいけない」


 一番の被害者の父さんが俺を嗜めて来た。

 ……父さんが言うなら仕方ない。


「……分かったよ」


 俺はしぶしぶ、これまでのお返しを口にするのを止めにした。


 そして牝豚は弁護士先生が作成したと思われる、何かの書類にサインをした。

 親権者変更及び養育費等に関する合意書、って書いてたような気がする。


 それが終わった後。


 牝豚は俺たちを睨みつけて


「男なんて全員死んでしまえ!」


 そう吐き捨てて、ファミレスから出て行った。


 ……何がだ。

 声と態度だけデカい、卑しい牝ゴキブリが。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 懸念点の一つはこれで解決した感じかな?クズ女が復讐を考えたとしても、それを実行する金はなさそうだし。 まぁそんなバカに引っかけられる男がいる可能性もゼロじゃないですが、その時は何…
ようやく…ようやくこの日が来たんやなって… よし後は血だけは繋がってるあのクソ男だ! あのクソには土下座させた上で頭踏んづけて欲しいわ
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