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第86話 迷宮産の弓の凄さ

 そして次の週末。


 俺たちは第5階層に居た。

 理由は、榎本さんがバイトで週末が埋まってしまって、今週は来られないって連絡があったから。


 なんでも、そのシフトに入っていた人間が急にバックれたかららしい。

 そしてそのシフトに都合がつくのが榎本さんしかいなかったんだそうだ。


 ……パーティメンバーとしてはさ、こっちも都合つかないじゃん、ってもんだけど。

 多分、他の人はずっと前から予定してたイベントだったり、どうしても外せない特別な用事だったりで、マジ外せない用事だったんだと思う。


 あと……


 榎本さん、家族関係で問題あるから


 アタシも外せない用事が……


 って言うと、ひょっとしたらバイトをクビになる可能性あるのかもしれないよな。

 榎本さんも第6階層に到達したから、一応バイト辞めても即座に生活に困窮することは無いと思うけど……


 生活レベルを落とさないといけないとかはあるかもしれないし。


 俺だって、父さんの補助が無ければ生活レベルを維持できるか怪しいなって思ってたんだよ。


 で、そういうことだから榎本さんの連絡を受け止めて。

 今日は第5階層で、弓の練習をしていた。


 ……サクラに貸して貰ったんだ。


「吉常サン、落ち着いてクダサイ」


 俺が連続で3射外して、ちょっと内心イラついてるのを見抜かれたのか。

 ジャングルジムの下で見ているサクラにそう言われてしまった。


 ……迷宮産の弓って、すごいな。


 ずっと剣一本でやってきて。

 弓を手にしたのは今日が初めてで、今日初めて知ったんだけどさ。


 迷宮産の弓は矢筒とセットで宝箱に入ってて。

 その矢筒に12本矢が入ってるらしい。

 そして矢を番えて射ると、後で射た矢が矢筒の中に戻って来る。

 どうも、矢筒から出して3分後に元の矢筒の中に戻って来る仕組みだそうで。


 つまりだ。


 3分間で12射までの制限はあるものの、無限に矢を射ることが出来る構造になってるんだな。


 知ったときは興奮したし。

 是非身に着けたいと思ったよ。


 その辺をサクラに話したら


「じゃア、今日は練習しまスカ」


 そう言って。

 毒鳥チンがうようよ居るエリアに案内して貰った。




 チンが多数存在するエリアは、廃墟の形が違ってて。

 廃屋という感じだった。


 なんというか、ゴーストタウン。

 人が住まなくなった家。

 商店街。

 そんな感じで。


 そこの電信柱に、電線に、大量にとまってる。


 ホント、スズメかムクドリみたいに。


「このバショならチンの毒は来まセン」


 サクラの経験則で比較的安全というポイント……誰もいない公園に案内して貰い、そこで俺はジャングルジムの上に立ち、バスバス矢を射ていたんだ。


 お手本でサクラが射て、確実にチンを射貫いて。

 その真似をして俺も射る。


 そのシステムで教えて貰った。


 でも、上手くいかない。

 俺がやると当たらないんだ。


 ……射るところまでは見ただけで出来たんだけど、的に当てるのは全然なんだよ。


 1回だけ偶然チンを射殺せたけど、あとは全然。

 悔しい。


 ……この辺が慣れなのかな。

 狙うという感覚を掴めば、一気にモノにできるのかもしれない。


「落ち込まナイでクダサイ」


 ジャングルジムの下で見守ってくれているサクラ。

 彼女はそう言って励ましてくれる。


「吉常サンはすぐにまっすぐキレいに矢を構えるコトを覚えましたシ」


 ……うーん。


 それは俺も学者持ちだし。

 別に普通だと思うんだけどな。


「吉常くん、弓を構えると剣が使えなくなるんだし。……そこまでこだわることは無いと思うよ」


 そして霧生が。

 俺が弓の能力が思ったところまで上達していかないことについて、そうフォローめいたことを言ってくれた。


 うん……言わんとすることは分かるんだけどな。

 二兎を追う者は一兎をも得ずって言うし。


 確かに……


 今日、もしモノになる実感が掴めなかったら。

 弓はスッパリ諦めるべきなのかもしれないな。

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