第85話 結果はどうだった?
「吉常くん、先週のご実家どうだった?」
次の月曜日。
登校して自分の席につくと、霧生が近づいて来て。
そしていきなりそう訊かれた。
俺はあの後、父さんが弁護士の先生に連絡を取ってる様を見せてもらい、その電話が終わった後に
「もっと早くに気づいてあげるべきだったね。確かめる勇気が無くて済まなかった」
父さんにそう言って謝られた。
……謝ることじゃ無いのに。
そこで俺は父さんの電話番号を教えてもらい、自分のスマホに登録をした。
当然、牝豚に見られたときのことを考えて、登録名を父さんにするのはやめておく。
代わりに設定したのは「十三」
これなら万一見られてもそういう名前の人と思うだろ。
確か、地名で十三ってところあった気がするし。
で、そこから電車で家に帰ったときには、夜8時を回っていた。
家に入ると牝豚は居ない。
どうせまた男関係だろ。
どうでもいいが。
で、気にせずとっとと寝る準備を整えて、寝た。
そんな先週の週末の首尾を訊ねてきた霧生に俺は
「バッチリだ!」
ちょっとテンション高くそう返す。
ここまで父さんがしてくれると思わなかった。
父さんは、俺が持って来た情報を「有効活用して見せるから」そう言ってくれた。
ただ、俺が一流の迷宮探索者を目指していることについては
「大学行くお金くらいなら出すよ?」
そう言ってくれたけど。
それを俺は辞退した。
……既に俺は迷宮探索者の道で人生の舵を切っているし。
それにこの夢は、もう俺だけのモノじゃ無い。
後半の理由は口には出さなかったけどね。
そんな戦果について、俺は霧生に語る。
「そっか」
霧生は笑顔だった。
そして
「結果ってどのくらいで出るのかな?」
俺も気になってるそのことに言及した。
俺はそれに対して
「あー、それはちょっと分かんないな」
そう言うしか無かった。
だって俺は弁護士先生じゃ無いし。
それにこういうの、弁護士の先生の腕にも左右されそうだと思うしさ。
具体的にどうするのかについても、教えてもらえなかった……
というより、父さんも別に弁護士じゃないからテキトーなことが言えなかったんだろうな。
俺のそんな返答に霧生は
「そっか」
そう、少し思案する顔で返してきて
「……今から不動産を探すのはフライングかなぁ?」
そう、ポツリと。
ああ……そっか
部屋選び、しなきゃならないんだよな。
あまり高いところは選べないわ。
……実は、高校出るまでは家賃を負担するって言われたんだよ。
父さんに。
キミは電気ガス水道代だけ払えばいいから、って。
それに関しては、俺は受けた。
ここでそれを断ると、アンタの施しは受けないって言い返してるみたいな気になるなと思ったんだ。
遠慮も過ぎれば失礼になる、って言葉が確かあったよな。