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えっ、吉常くん大学行かないの?~托卵で生まれた俺、大学に行かずに迷宮探索者で立身出世を目指す~  作者: XX
第8章:解放のとき

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第84話 俺の父さん

 もうずっと会ってなくて。

 顔も覚えていない父さん。


 目の前の背広姿の男性……俺の父さんは


 想像より年齢が上な気がした。


 背は俺より少し低い。

 それが年齢のせいなのか、元々なのかちょっと分からない。


 頭は禿げてはいないけど、顔の皺は多い気がする。

 ……体型は


 別に太ってない。

 目立って筋肉質でも無かったけど。


 全体的に穏やかな雰囲気がある人。

 俺の父さんはこういう人だったのか。


「お久しぶりです」


 俺は深々と頭を下げた。

 父さんとは呼ばない。


 呼びたいけど。


「そうだね。もう15年は会って無いのかな」


 父さんは穏やかにそう返す。

 そして続けた。


「……彼女が、キミが僕を憎んでいるから、面会を拒否しているって言っていたからね」


 彼女……牝豚ことだろ。


 あの牝豚がそんなことを!


 俺は弾かれたように顔を上げ


「それは大嘘です! 信じないで下さい!」


 思わず叫ぶ。

 それに対して父さんは


「それは予想はしてたさ。……でも、もし本当だったら辛すぎると思ったから、調べて無かったんだよ」


 ごめんな。

 父さんはそう言って俺に詫びる。


 ……謝る必要無いのに。


「……聞いたよ。独立の目途が立ったらしいね。おめでとう」


 そう言って微笑む。


「昔はファルコンソルジャーの剣を誕生日にプレゼントしたら、跳び上がって喜ぶ子供だったのに」


 ファルコンソルジャーってのは、昔の特撮ヒーローの名前だ。

 その表情には懐かしそうな色があった気がする。

 そしてそこから


 真顔になって俺を見つめ


 言った。


「親権を彼女から剥奪すれば良いんだね? 一応言っておくよ?」


 この国は親権について、女性に極めて有利な取り扱いをする国だ。

 そこは理解しているね?


 僕だって、離婚のときに強く主張したよ。

 彼女の人格は子育てに不適格だから、僕が育てると。

 だけど、認められなかった。


 それを踏まえてもう一度訊くよ?


「彼女から君の親権を剥奪して欲しいと言うんだね?」


 ……これは試されている。

 俺は感じた。


 ここでの返答を間違うと、俺は失望されるだろう。


 ……求められている答えは……


「アイツは俺の養育費を使い込んでいます」


 これだと思う。


 どんなに稚拙でも良い。

 父さんに対して、有利になる情報提供……


 だったらやって貰えないのか?

 もう一度お願いします、とかじゃない。


 そんな……自分の要求を丸投げするような発言じゃない。


 俺が俺を救うために、俺自身も努力し協力する姿勢を示す一言だ。


「……なるほど」


 父さんは頷いた。


「どこからそう思ったんだ?」


「……アイツ、週に数回のパートでしか働いていないのに、ブランド物のバックだとか服だとかを良く買うんです。パートでそこまで儲かるわけないですよね?」


 根拠も挙げた。


「なるほどね……」


 俺の言葉に父さんは少し感心したように頷いた。

 そう思えた。


「分かった。ちょっと知り合いの弁護士に相談してみるよ」


 父さんはそう言って、失礼、と一言付け加え


 自分のスマホを取り出して、どこかに電話する。

 多分、その弁護士の人だろうか……?


「ああ黒岡先生ですか? ちょっとご相談したい件がありまして……今、よろしいですか?」


 その電話する姿に。

 俺の父さんが立派な人間であることが理解できて。


 ……俺がこの人の実子で無いことがとても悲しくなった。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 おばあちゃんもですが、この人も正しい感性を持つまともな人というのが伝わって来ますね。本当にどうしてあんなクズの極みみたいな女に捕まってしまったのか…人生って不思議ですなぁ。 そ…
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