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第81話 とうとう行くのね

「そっか。……とうとう行くのね」


 そろそろかと思っていたわ。

 榎本さんがそう、なんだか感慨深げに言った。


 まあ、榎本さんは俺の事情を知ってるしな。


「理由は親権者の変更?」


「ええ」


 榎本さんもそれを知っていたか。

 まあ、詳しく知らなくても予想できるかもしれないが。


「……えっ?」


「吉常サン……?」


 霧生が話についていけないみたいだ。

 サクラに至っては、ついていけない以前の問題。

 俺の事情を全く知らないから、欠片も理解できてない顔だった。


 霧生は俺の事情知ってるけどさ

 まぁ、霧生はこれについて調べたこと無いかもしれないし。

 ピンと来ないかもしれない。


「……未成年は自分で部屋を借りれないんだよ。親権者の同意が要るんだ」


 だから、俺がやりたいことを言葉にした。


「でも今の親権者が絶対に同意しないから、変えるんだよ……戸籍上の父親に」


 俺の言葉に霧生はかなり驚く。

 そして


「……そんなこと、できるの?」


 そんなことを言って来たが


 俺は


「やってみないとわかんないけどさ」


 一応、確か俺の今の年齢は、自分の意志で親権者を選べる年齢ではあるんだよな。

 もし離婚が今起きたら、の話だけど。


 だから


「頼みに行くんだ。俺の現状を伝えて、アイツから親権を奪い取ってくれって」


 そして俺は今の稼ぎで、ボロくても良いから部屋を借りて。

 自分1人で生きていく。


 独立して


 ……アイツの金づるじゃなくなるんだ!


 そう、俺が週末に向けて決意を固めていると


「一応、注意しておくわね」


 榎本さんが忠告してくれる。


 俺は


「何ですか?」


 何を言われるのだろう?

 そう、少し不安を覚えながら訊くと


 榎本さんは


「絶対に謝っては駄目よ? あなたの場合、謝ることが脅迫に近いものになると思うから」


 何故って、あなたの生まれの問題は、全てあなたの実父と母親が悪いのであって、あなたには何の責任も無いんだからね?

 それなのに謝るのは、相手に圧力を掛けているのと同じ。


 それはきっと、後々のあなたのお父さんとの関係にしこりになってしまうと思うわ。

 そこは本当に気を付けて。


 吉常くん。あなたは贖罪意識がすごく強いから、そこだけが心配なのよ。


 ……榎本さんの言葉に。

 俺は緊張した。


 なるほど……


 正直、俺は父さんには申し訳ない気持ちがいっぱいなんだ。

 でも、それを今表に出すのは、圧力になってしまうのか……


「分かりました。肝に銘じます」


 俺は深々と頭を下げる。


「健闘を祈っているわ」


 そんな俺に、榎本さんは優しく笑って。

 激励の言葉をくれたんだ。





 そして問題の週末がやって来た。


 俺は、父さんの住んでいる場所は知っていたから、電車を乗り継いでやって来た。

 俺が今住んでいる場所から電車で1時間程度離れた場所。


 一応の、高級住宅地。


 ここに住んでるんだ。

 俺の父さん……


 頼朋よりとも源一郎げんいちろうは。

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