第78話 サブクラスに学者を取ったら
霧生がサブクラスに僧侶を選んだ。
学者を選ぶんじゃ無かったのか……?
何で変えたんだ……?
分からん……
本人は「ヒーラーは複数いた方が良いよね」って。
そりゃそうだけど……
一生ものなんだぞ?
ゲームじゃないんだぞ?
それなのに……
そんな風に引っかかるものはあったけど。
その後すぐに行われた2学期の中間テストで。
俺は悪いけど……
他人のことが吹っ飛んでしまった。
俺の学校では。
定期テスト終了後、学校の昇降口に設置されている掲示板に。
テストの結果が50位まで貼り出される。
これがこの学校の方針なんだけど。
そこに……
3位 吉常天麻
マ・ジ・カ。
……今まで50位以内に入ったことが無かったのに。
定期テスト順位で、10位以内に入ってしまった……!
「吉常くん! やったね!」
自分の順位に半ば恐怖に近いものを感じる俺に、嬉しそうに霧生がそう祝福の言葉を掛けて来た。
俺はその言葉に
「ああ、ありがとう……」
そう返して
「……まさか学者を取るだけで、ここまでテストの順位が変わるとは思わなかった……」
「元々何位ぐらいだったの?」
「100位前後をウロウロ……」
それがいきなり一桁なんて。
ビビるわ。
「テストはどんな感じだったの?」
「……なんか。問題が全部授業でやったことの変形に見えて来て、楽勝だなぁって思って」
正直、今回テストの難易度が下がったのかと思ってしまった。
これが脳機能の強化か……
俺のそんな言葉を
「そっか」
霧生が興味深そうに聞いてくれて。
後日。
「あのさ吉常くん、今度の週末さ」
教室で。
授業が終わって俺が帰る準備をしていると
「空いてる?」
そんなことを訊いて来たんだ。
俺は
「……うん、大丈夫だけど?」
大体、いつも迷宮に潜ってるわけだし。
空いてるのが基本だろ。
何を言い出すんだと、内心思いつつ。
そしたら
「実はすでに恋さんには話しているんだけどさ」
そう前置きし
「今週の日曜日、体育館に古武道の団体が演武に来るんだよ」
そして日曜日。
俺はこの街の体育館前で待ち合わせた。
時間として10時から2時間、古武道の演武をするらしい。
霧生は「今後の吉常くんのために、1回本物を見ておいた方が良いと思う」って言って来たんだよな。
どうも、俺の中間テストの話を聞いて
今の吉常くんは本物に触れることで大きく成長できるのでは?
そう思ったんだとか。
授業を聞いた内容だけで、定期テストの結果がこれまでよりも大幅に良くなった。
その結果から考えて。
待ち合わせは9時30分。
今は9時20分だから、そろそろのはず。
……何だかそわそわし、俺は自分の服に視線を向けた。
髪型とか服とか、ちゃんとしてるだろうか……?
一応、自分の服で一番良いと思える白いシャツとジーンズを着て来たけど……?
急に不安になり、自分の姿を確認できるものが周囲に無いか探し始めたとき
「お待たせ」
霧生がやってきた。
……黒いトップスと、薄い灰色のフレアスカート。
上品な感じで、霧生に良く似合っていると思った。