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第77話 学者の能力

 クリスタル……


 俺がこの物体の前に立ったのは1年以上前だ。

 もっとも、それは第2階層の、赤いやつだけどな。


 命を賭ければ素人でも辿り着けるかもしれない最初のクリスタルとは違い


 こっちは相応の実力が伴わないと絶対に触れない代物。


 隣には霧生がいて、俺は……


 あのときのこと……

 迷宮で霧生と出会った日のことを思い出した。


 あのときはホブゴブリンの動向を気にしながら、霧生がクリスタルに触れるのを眺めていた。

 実はあのとき。

 ペタッと手で触れれば終了なのに「妙に動きが遅いな、早くしてくれ」と思ったんだよな。


 あのときはホブゴブリンがいたから、焦りでそう思ったのかもしれないと思ったけどさ。

 今思うと、一瞬霧生は考えたのかもしれない。

 このまま予定通りに学者取ると不味く無いか? って。

 で、ちょっと迷って、決断したのか。


 学者じゃ無くて魔術師にしよう、って。


 ……結局はそれが正解で。

 そんなふうに、霧生は突然決断を迫られても、冷静に決断できる人間なんだな……


 そこを俺は、心底すごい奴だと思ってる。


 そんな俺の視線に気づいたのか


「えっと、何?」


 霧生が少し戸惑いを含んだ視線で見返して来た。

 俺は


「……いや、1人の人間が1年以内に赤い最初のクリスタルと青いセカンドクリスタル、その両方に触るところを目撃するってレアなんじゃないかと思っただけ」


 そう、何気なく言った。

 すると霧生は


「……ひょっとして吉常くん、雪が積もったとき、一番最初に足跡をつけたいタイプ?」


 そんなことを。

 何だか恥ずかしそうに。


 それを聞き俺は


「何か非難されているように思えるのは気のせいか?」


 思ったことを口にする。

 それに対し霧生は軽く


「いや、してないけど」


 そか。

 

 ……まぁいいや。


 今の会話で、俺から気負いのようなものが無くなってしまった。


 俺は呆れるほどあっさりと、青いクリスタルに触れる。


 すると


『2番目のクラスを選んでください。補助的なクラスであるサブクラスを』


 頭の中に、そんな言葉が浮かんだ気がした。




 2番目のクラス……


 そうイメージした瞬間。


 学者、魔術師、僧侶、召喚士……


 俺の戦士の他の4つのクラスの名前が浮かぶ。


 俺は


「学者」


 即座に声に出して、決断した。

 決まってたことだしな。


 すると……


 なんだか急に、世界が色づいて見えるようになった気がした。

 まるでこれまでの世界はモノクロだったような……


 青いクリスタルが目の前にある。


 クリスタルは形状が縦に長い結晶体なんだが……


 その縦の長さがおよそ150センチ。

 それを確信を持って言える自分を発見した。


 その根拠は、俺の身長が177センチで。

 そこから30センチ定規分を差し引いたくらいの長さだな、と。


 なんだか……そういうイメージのものさしが、絶対的なものになってる……


 これが脳機能の強化ってやつか……


 この「イメージのものさしが絶対的なものになる能力」は、学者ランク2のスキル<絶対感覚>ってやつらしい。


 モノの長さとか、重さとか、音量、音階だとかを。

 機械や定規を使わずに正確に感じ取る能力。

 すごい能力だけど、これ戦いに活用できるのか……?


 そこが少し気になった。


 後でサクラに訊ねてみるのもいいかもしれない。


 そんなことを思って俺がクリスタルから手を離すと。

 霧生も同じように手を離していて。


「霧生も終わったのか」


 俺はそう、何気なく訊いた。

 霧生は結局最終的に何を取ったの?


 続けてそう、訊くつもりで。

 内心、多分学者だろうなと思いつつ。

 だって、最初の最初は学者を取るつもりだったんだし。


 だけど霧生は……

 何でもない顔で


 俺の予想の外のことを、しれっと言って来た。


 それは……


「私は僧侶にしたよ」


 えっ。


 ……なんで?

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 吉常くん主人公だし、もしかしたらレアもののサブクラスが…とほんのり期待してたけど、そんなことはなかったぜ! そして霧生ちゃん、キミ絶対嫉妬からサブクラスを僧侶にしたじゃろ?ww …
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