第75話 4人目の仲間
「それは、俺たちのパーティに入りたいってこと?」
俺の言葉にサクラは頷く。
それって……
俺は思わず、他のメンバーを見回した。
サクラのメンバー入り。
これは迷宮内で完結するなら、証拠は残らない。
ここでは機械を持ち込めない以上……
会話の録音なんて出来ないし。
写真も撮れない。
証拠を揃えられないから、告発できる人間は居ないわけだ。
外に漏れたら重大な犯罪だけどな。
ものすごい罰金を取られるか、下手すりゃ刑務所……
こんな重大な決断、俺1人では出来るわけがない。
皆、どうする……?
「……ハッキリ言って、サクラさんの能力は欲しいわね。迷宮探索者の学校に行ってたってだけあって、身体を鍛えぬいてるのは見てわかるし」
榎本さんは淡々と、サクラを見た印象を口にした。
確かサクラは
この部屋にモンスターが入って来たらどうするの?
この質問に
そのときは窓から逃げル。
こう答えたんだ。
……訊いた話だけどさ。
フリークライミングっていうスポーツの熟練者は、ビルの壁ですらスイスイ登るらしいね。
サクラ、きっとそういう技術持ってるんだろうな。
だから「モンスターが来たら窓から逃げるよ」
こんなことが平気で言えるんだろう。
それは、高い身体能力の裏打ちがあるから言えることで……
あと、純粋に弓の腕。
学者を取ったときに強化された脳機能を活かして、習得したって言ってたけど。
それを加味しても、相当な腕前だった。
ミノタウロスの片目を射貫いたんだから。
後衛として欲し過ぎる。
でも……
俺はちらりと霧生を見る。
俺たちは1回騙された。
あのウラキってやつに。
欲し過ぎる人材だからと甘めにジャッジして、仲間入りさせて危うく死にかけた。
霧生の意見はどうなんだろうか……
霧生は少し、考え込んでいた。
そこに榎本さんが追加でこう言う。
「サクラさんが海外の工作員ってパターンはおそらく無いと思うから、確実に法律違反ではあるけど、アタシはそれが罪であるとは思わないわ」
機械が持ち込めない上、誰も来ない場所に1人で潜伏してて、スパイもクソも無いもんな。
確かにそうだ。
サクラを仲間に入れたとしても国賊野郎と詰られる事態になるとは思えない。
……俺としては
サクラからは悪い印象を受けなかった。
大体、そんなややこしい裏事情があるのに、俺たちを見捨てないで加勢してくれたんだ。
そんな人が俺たちを騙すなんて……
意味が分からないだろ。
そのとき。
霧生が口を開いた。
「……ひとつ、訊いていいですか?」
「ナニカ?」
サクラが霧生に目を向ける。
霧生は
「何であの国からの亡命者なのに、私たちに加勢してくれたんですか?」
俺も訊きたかったこと。
それを訊ねたんだ。
サクラはその問いに
「ソコクで目の前でナカマが死ぬのを何度も見て来たカラ、死にそうなヒトを見捨てるのイヤだった」
ほぼ、即答した。
その答えを聞いた霧生は
数瞬後
「……私も賛成します」
榎本さんに賛同する形で、認めてくれた。
それがなんだか……
渋々、という感じに見えたのは多分俺の気のせいだろう。
意味が分からんし。