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第59話 5階層に踏み込むにあたり

 明日からいよいよ第5階層だ。

 夏休みも残り1週間。


 榎本さん曰く「第5階層は世紀末世界」らしい。

 世紀末世界って言われても、俺はピンと来ないんだけど。


 まぁ、明日になればいよいよわかる。


 今日は霧生と明日に備えて一緒に食事しようという話になり。

 焼肉に来た。


 またか。

 そう思うかもしれないけど。

 ……本人がこれが良いって言うから仕方ないんだ。




「サブクラス、何を予定してる?」


「んー、やっぱ学者かなー」


 テーブル席で向かい合い、一緒に肉や臓物モツを焼きつつ、取らぬ狸の皮算用ならぬ、取らぬサブクラスの内容談義。


 頑張れば出来る。

 俺たちはそんな気がすごくしていた。


 ……一応、榎本さんの前のパーティは、取るまでは行ってそこでギブしたような難関なんだけどな。


「吉常くんは何を取るの?」


「俺も学者かな」


 もう、決めていた。

 俺のそんな答えに


「将来的に迷宮探索者を辞めた後を考慮に入れてるの?」


 霧生は少し、意外そうに訊いて来たけど。

 俺は首を左右に振る。


「そうじゃない。……上級職になったときに魔道騎士になる選択肢は取りたく無いんだ」


 頭の中にあったのはアイツ。

 俺の生物学上の父親。


 四戸天将。


 ……悔しいが、アイツの実力は本物だ。

 魔法の使い方が鮮やかだったし。


 前衛戦士としての実力も、ズバ抜けていた。


 正直、同じ魔道騎士になった場合。

 アイツを上回るのは無理だと思った。


 なので、他の上級職を選ぶ選択肢を、と考えて。

 最終的に学者を選択した。


 戦士と学者の組み合わせなら、今の俺に脳機能の強化が加わるだけ。

 あまり大きく俺の在り方は変わらない。

 今の俺をさらに積み上げる形になる。


 魔道騎士や、他の魔法上級職の場合は、隣に「魔法使いの自分」を新たに設置する必要があることを考慮に入れると、はるかにやりやすい。

 魔法の使い方のセンスや技術を新たに習得する必要が無いのは本当にデカイと思う。


 魔法のセンス……霧生を見ていると、あまりにも高い壁であるとしか思えんしな。

 正直、霧生と魔法対決に至った場合に、勝ててる俺が想像できんし。


 その辺を彼女に伝えると、霧生は少し恥ずかしそうに目を逸らした。


 そして彼女は


「じゃあ、学者とるのやめよ……」


 何かをボソリと呟いた。


「えっ、なんて?」


 訊ねると


「何でも無いよ」


 霧生は微笑む。


 本人がそう言うならまぁいいけど。


 そこで何か話が終わってしまった感があったので


 話題を切り替えるために、俺は


「そういや、朝待ち合わせ場所に来たとき、何か機嫌悪そうだったけど何かあったの?」


 ちょっとだけ気になったことを、ここで訊ねた。

 愚痴を聞くつもりで。


 すると彼女は


「えっ、顔に出てた?」


 焦り出す。

 本人的には隠してたのか。


 俺の目には明らかに顔に出てたんだけどな。

 頷くと


 彼女は目を逸らして、少し迷った様子だったので。

 俺は「無理に言わなくてもいい」と付け加えようとしたとき。


「……実はさ。親と喧嘩したの」


 その前に言われてしまった。

 どうも彼女、出掛けに親と喧嘩したらしい。


 その原因は……


 霧生は口を尖らせて言う。


「高校3年生に上がるまでに第6階層に到達して、その気になれば独立可能な立場になって見せるから、って啖呵切っちゃった」


 どうも、霧生が迷宮探索者をしてることがバレて。

 そのせいで、親御さんと言い合いになったんだってさ……。

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